2021 Fiscal Year Annual Research Report
鉛・亜鉛汚染地における健全土壌の再生成に向けた植物―微生物相互作用の解明
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20J00656
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
龍見(岩岡) 史恵 北海道大学, 農学研究院, 特別研究員(CPD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2025-03-31
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Keywords | 土壌微生物 / 微生物間相互作用 / 植物ー微生物相互作用 / 微生物間ネットワーク / 菌根菌 / 腸内菌叢 / 硝化 / 窒素循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、汚染土壌の回復にとって鍵となる植物―動物―微生物間の相互作用を理解し、その応用可能性について検討することを目指す。当該年度の研究において、室内で鉛添加土壌を培養した結果、鉛汚染により、土壌中の微生物群集構造が大きく変化し、特に高濃度の汚染下で微生物間の繋がり(ネットワーク)が希薄化することが明らかとなった。微生物間ネットワークの複雑性は、重金属汚染を伴う都市化によっても低下すること、さらにそのネットワークの中心となる微生物は、植物の養分供給や病原抵抗を支える菌根菌であることも明らかとなった。実際に菌根菌の機能が低下しているかについても、土壌からRNAを抽出することによって現在調査を進めている。また、ザンビアから輸入した土壌の微生物群集構造についても現在分析を行っており、同様の変化が見られるのか検証したいと考えている。加えて、鉛汚染は、土壌中の窒素循環、特に植物にとって利用しやすい硝酸の生成(硝化)に関わる微生物の数を減少させ、それに伴い硝化速度も減少させていた。鉛添加土壌に堆肥を投入し、また、土壌上で動物(マウス)を育成したところ、汚染土壌における堆肥や動物の存在は、硝化機能の回復に貢献することが示唆された。これに関連して、放牧酪農場を対象に糞や堆肥、および土壌を採取した実験から、糞・堆肥・土壌に生息する微生物の間には多くの共通種がいること、糞や堆肥中にも見られる微生物が土壌中の微生物間ネットワークの中心に位置していることが明らかとなっており、糞や堆肥の投入が土壌微生物群集を変化させている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの影響により、ザンビアに渡航することはできていないが、現地から試料を輸入することに成功した。また、鉛汚染土壌を用いた室内培養実験、および類似の環境傾度下や各研究目的に合わせた系内での調査によって、課題に沿った研究を進めることができており、複数の論文を投稿できる目途が立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ザンビアから輸入した土壌の分析を進め、生育良好な個体周辺に共通する特異的な微生物要素について解明する。コロナウイルスの状況が落ち着けば、ザンビアにも渡航し、さらにサンプル数を増やす予定である。また、重金属汚染度とも関連する都市―郊外傾度を用いて、引き続き研究を行う予定である。具体的には、現在も取り組んでいる課題である、都市化によって著しく低下している微生物機能の特定をRNAの解析を用いて進める。また、汚染土壌(都市)と非汚染土壌(郊外)を混合し、その土壌上で植物を育て、汚染土壌と非汚染土壌の微生物が群集を再構築する過程、および植物生育への影響を観察する予定である。また、これに関連して、ある生息域の真菌と、異なる生息域の細菌を混合し、群集の再構築過程を観察する実験を行っており、分析まで完了させている。この実験の解析についても進め、結果を統合して、外部から持ち込んだ微生物が、元々いた微生物とどのように群集を再構築するのか、さらにその新しい微生物群集は理想的な機能を発揮するのか、について理解を深める。加えて、これまでの研究成果を随時論文としてまとめていく予定である。
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