2021 Fiscal Year Annual Research Report
The role of swimming mechanism in fish schooling
Project/Area Number |
21J20341
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
江口 剛 北海道大学, 水産科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | PIV / 魚群 / 遊泳行動 / バイオメカニクス / エナジーセーブ / 圧力分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では流れの変化を利用して尾ヒレを動かさずに推進する「無振動遊泳」や、ヒレの柔軟性が持つ機能などを、複数の魚種やサイズでの実験を通じて調べ、最終的に魚群遊泳で起こる力学的なメカニズムの解明を目的としている。今年度はまず「無振動遊泳」の安定的かつ再現性のある実験条件の模索および環境構築と、実際に無振動遊泳した際の流れ場の可視化に注力した。 申請時の計画通り、まずは透明のアクリル平板を回流水槽に設置、構造物を起因とした流れ場の変化を再現し、どういった条件で魚が無振動遊泳になりうるか模索した。魚の遊泳行動に変化はあったものの、平板の端による剥離領域の拡大が遊泳時の安定性に影響を及ぼす傾向が見られた。より安定した無振動遊泳と魚群遊泳に近い流れ場の環境を目指し、実験魚と同等の体サイズを持つ流線形の透明な模型(翼模型)を3Dプリンタで作成した。平板から切り替えて実験を続けたところ、ウグイとマアジという複数の魚種で安定的な無振動遊泳の再現に成功した。 無振動遊泳の再現に成功したため、回流水槽にトレーサー粒子を懸濁しレーザーシート光で照射して流れ場を可視化するPIV解析によって、無振動遊泳時の魚体および模型まわりの流れ場の流速データを取得した。得られた速度データから、流体の支配方程式であるナビエ・ストークス方程式の発散に連続の式を適用して圧力に関するポアソン方程式を得る手法を採用し、圧力分布を推定した。 その結果、集群性のある魚は構造物(翼模型)近傍に生成された低圧領域による「引き寄せられる力」を利用して、魚体にかかる抵抗との釣り合いをとっていたほか、魚自身も翼模型のように流れに対し迎角を取ることで、模型から離れる方向に揚力を発生させて「無振動遊泳」を実現させている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標である「無振動遊泳」の解明に向け、計画通り平板のほか流線形など翼模型を用いた生体実験を行い、回流水槽での無振動遊泳の再現および撮影に成功した。高速度カメラやレーザー機器の購入はできなかったが、他大学・他研究室から実験機器の一部を借りて対応した。光造形式3Dプリンタによる透明模型の製作にも取り組み、レーザーシート光による構造物の陰影の影響を抑え、PIV解析によって無振動遊泳時の魚体および構造物まわりの流れ場の流速データを取得できた。以上を計画通り達成し、得られた知見は国内の学会で発表できたため、おおむね順調通りに進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で得た無振動遊泳時のPIV解析結果をもとに、流速データから圧力分布の推定を引き続き取り組み、魚体にかかる力を求める。追加で翼模型でもPIV解析による圧力分布を求め、推定した揚力・抗力を実際に三分力計で計測した値と比較し、値の妥当性を調べる。その上でマアジなどの無振動遊泳時の圧力分布を再評価し、これまでの結果と合わせて論文としてまとめられるよう実験解析を進める。 同時に、高速度カメラで撮影・取得した無振動遊泳時の模型と魚体の位置座標などを参考に、PIV解析だけでなくOpenFOAMなどシミュレーションでも無振動遊泳のメカニズムを検証する。詳細に仕組みを解明することで、実際の魚群遊泳(複数個体遊泳)で尾ヒレ振動周波数の低下が起こりうる瞬間など、流れ場による影響を考慮した流体力学的な視点から魚群遊泳時のエナジーセーブに関する考察へ寄与できる可能性がある。
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