2021 Fiscal Year Annual Research Report
π共役系の切断と劇的な構造変化を引き起こす光応答性材料の開発
Project/Area Number |
21J20973
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
稲葉 佑哉 北海道大学, 大学院工学研究院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 光応答性材料 / π共役系 / ひずみ分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者がこれまでに発見した光刺激によってπ共役系の切断を伴う構造変化を引き起こす素子を基盤とした、劇的な構造変化およびそれに伴った物性変化を引き起こす光応答性材料の開発を目指している。初めに当初の計画に従い光応答性素子の化学修飾を行い、光による劇的な構造、物性変化が期待される分子の構築を試みたが良好な結果は得られず、光応答性素子の合成段階からの官能基導入の検討の必要性が示唆された。その一方で、光応答性素子の前駆体となっている脂肪族オリゴケトンから大きなひずみを持った大環状化合物を合成する手法を見出し、そのひずみに由来した反応性を発見した。 大きなひずみを持った大環状化合物は環状オリゴケトンに対してパールノールピロール形成反応を行うことによって合成され、単結晶X線構造解析や理論計算による推定の結果からそのひずみの大きさが示された。この大環状化合物は、酸性条件下において炭素-炭素結合の開裂起こして開環し、二量化環化するという興味深い反応性を有しており、酸の刺激によってひずみに由来した劇的な構造変化を引き起こすモチーフであることがわかった。 ひずみを駆動力とする反応性は。ひずみの解消に伴う大きな構造変化を起こすことが期待される。また、ここで発見したひずんだ大環状化合物の合成法には前駆体として脂肪族カルボニル化合物を用いるが、この脂肪族カルボニル化合物には光応答性を含む様々な反応性を持ったモチーフを導入することも可能である。そこで今後は、当初の計画にあった光応答性素子に対する官能基導入を試みるほか、光応答性部位を有するひずんだ大環状化合物の設計およびそのひずみを駆動力とした光応答性の検討を試みていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた光応答性素子のπ共役末端に対する官能基導入を検討したものの、良好な結果は得られなかった。しかしその一方で、新たに光応答性材料の構築基盤となりうる、ひずみを有する大環状化合物の合成手法を発見し、酸をトリガーとするものではあるが歪に由来した反応が劇的な構造変化を与えることを見出した。ひずみを駆動力とした反応は大きな構造変化を伴うことが期待されるほか、本合成手法は前駆体となる脂肪族カルボニル化合物の段階で様々な部分構造を導入することが可能なため光応答性を有するひずみ分子への展開も可能であると考えられる。 以上のように、当初の計画にあった検討は良好な結果を与えなかった一方で、新たな光応答性材料の設計指針となりうるひずんだ環状分子の構築法を見出した。新たな光応答性材料構築のモチーフを確立する手がかりを見出し、現在はひずんだ大環状分子に対する光応答性ユニット導入の検討も進行中であるため、当研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の計画通り光応答性素子に対する合成段階からの官能基導入を試みることに加え、これまでに発見したひずんだ環状分子の合成法によって新たな光応答性材料の開発を検討していく。特に、後者の手法によってひずんだ環状分子に対して大きなπ平面を持つ光応答性ユニットを導入すれば非常に大きな構造変化を引き起こす材料となることが期待されるため、その先駆的な検討として光応答性を有するひずんだ環状分子の合成および反応性の検証をおこなった上で、当初目的として掲げていた、劇的な構造変化を引き起こす光応答性材料の設計、構築を行っていく。
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Research Products
(5 results)