2023 Fiscal Year Annual Research Report
修飾Cp金属錯体とキラル酸の触媒間水素結合を利用した不斉C(sp3)-H官能基化
Project/Area Number |
22KJ0025
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
冨田 永希 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | C-H官能基化 / 不斉反応 / Ir触媒 / Re触媒 / Cp配位子 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究において、CpAIr(III)錯体及びCpEIr(III)錯体の合成を行い、これらの錯体がC-H官能基化反応において独自の反応性を示すことを明らかとしてきた。しかしながら、これらの錯体は不斉反応への適用が困難であることがわかった。そこで、不斉反応への適用を志向した新たな錯体として、高原子価Cp*Re(III)錯体の開発を行うこととした。第7族遷移金属であるReを中心金属として有する本錯体は、高原子価第9族遷移金属Cp錯体と比較して余剰の配位場を1つ持つため、ここに不斉配位子を導入することで、C-H官能基化反応の不斉化を行うことが可能になると考えられる。この仮説のもと、低原子価Re(I)錯体から、新規高原価Cp*Re(III)錯体の合成を行った。続いて、本錯体を触媒として用いてC-H官能基化反応の適用反応系の検討を行った。しかしながら、これまでの検討において、本錯体が適用可能な反応系を見出すことはできなかった。そこで、別の適用反応系として、アレーンの官能基化反応を検討することとした。種々検討した結果、青色光照射下でCp*Re(III)錯体を触媒として用いることで、形式的なアレーン分子のベンジル位C-Hアルキル化反応が、低収率ではあるものの進行することを明らかとした。本反応では、Cp*Re(III)錯体とアレーン分子がη6アレーン錯体を形成することで反応が進行していると推測される。そのため、不斉配位子を導入することで、本反応の不斉化応用が可能であることが期待される。以上のように、当初想定していたCpAIr(III)錯体を用いた不斉C-H官能基化反応の開発は達成することができなかったが、その過程で二つの新規金属錯体の合成に成功し、それぞれが独自の反応性を示すことを見出した。今後、これらの錯体を用いた新規反応の開発や、その不斉化応用が進むことが期待される。
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