2023 Fiscal Year Annual Research Report
植物の環境ストレスに応答した非AUG開始型uORFによる翻訳調節機構の研究
Project/Area Number |
22KJ0031
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平郡 雄太 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 非AUG開始コドン / 上流ORF / ポリアミン生合成 / 翻訳制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリアミンは植物のストレス応答において重要な生体分子である.本研究では,シロイヌナズナにおけるゲノムワイドな探索によって同定された,ポリアミン合成酵素遺伝子に存在する非AUG開始コドンから始まる上流オープンリーディングフレーム(uORF)による翻訳制御機構とその生理学的役割について解析した. 令和3年度から4年度にかけて,葉肉プロトプラストを用いた一過的発現解析を行い,ポリアミン合成酵素遺伝子の非AUG開始型uORFが細胞内のポリアミンの濃度に応答してポリアミン合成酵素の翻訳を抑制するという負のフィードバック制御に関わることを明らかにした.また,このフィードバック制御には,最初に注目した非AUG開始型uORFのほかにも別の2つの非AUG開始型uORFとRNA二次構造が必要であることを明らかにした.さらに,これらのシス配列は他の植物種のオルソログにも見出され,オルソログの配列を用いた一過的発現解析により,他のいくつかの植物でも同様のフィードバック制御が存在することを明らかにした. 令和5年度はこの非AUG開始型uORFとRNA二次構造を破壊したシロイヌナズナを作出し,HPLC分析により内在のポリアミン量の測定を行った.その結果,このポリアミン合成酵素が直接関わる特定のポリアミン種のみが変異株において野生型株の約3.5倍に増加した.また,寒天培地での生育解析の結果,変異株の主根長および地上部の新鮮重量は有意に小さかった.これらのことは,非AUG開始型uORFとRNA二次構造が関わるフィードバック制御が特定のポリアミンの恒常性維持と植物体の正常な生育に必要であることを示唆するものである. 本研究の成果は,植物における非AUG開始型uORFによる翻訳制御機構とその生理学的意義についての知見を拡張し,また植物のストレス応答に重要なポリアミンの恒常性維持機構を明らかにしたことである.
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