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2021 Fiscal Year Annual Research Report

日本の植物園の希少種分譲システムに起因する域外保全株・保存種子の遺伝的劣化の解明

Research Project

Project/Area Number 21J22040
Allocation TypeSingle-year Grants
Research InstitutionHokkaido University

Principal Investigator

田村 紗彩  北海道大学, 環境科学院, 特別研究員(DC1)

Project Period (FY) 2021-04-28 – 2024-03-31
Keywords植物園 / 絶滅危惧植物 / 生息域外保全 / 導入・増殖・分譲履歴 / アンケート調査 / メタコレクション / 保全手法 / 遺伝的多様性の保全
Outline of Annual Research Achievements

植物園では,絶滅危惧植物の保有株の消失リスクを分散させるために他園へ株や種子を分譲することがある.今年度は,分譲の有効性を検証するため,2園以上で保有される絶滅危惧IA類110分類群を調査対象として,全国の大学・国公私立・薬用植物園32園に対し,その導入・増殖・分譲履歴に関するアンケート調査を実施した.
調査の結果,日本の植物園で同一系統を繰り返し分譲した例はなく,ある分類群の全国の生息域外保全株が分譲によりクローン化している可能性は低いと判断された.一方で,調査で回答された保全株のうち,約4割が他の植物園からの分譲で導入されており(残りは植物園以外の機関からの導入や,野外採集,購入),単発的な分譲は活発であることが示された.すなわち,生息域外保全コレクションの質は,植物園間の分譲に強く影響を受ける可能性が示唆された.
ただし,分譲された生息域外保全コレクションの中には,分譲元の園に分譲した記録が残されていないもの,分譲に伴い由来自生地の記録が欠失したものが含まれていることが明らかになった.つまり,植物園間の分譲においては保全協力が必ずしも図られていないという課題が示された.
近年,植物園の生息域外保全の質を高めるため,同一分類群を保有する植物園間で由来自生地の情報を共有し,複数系統を分担して保全することにより全体で遺伝的多様性を高める「メタコレクション」(Griffith et al., 2020, Int. J. Plant Sci.)の手法が提唱されている.この保全手法の有効性の検証と,実施上の課題を明確化するため,日本の絶滅危惧植物のうち複数分類群を対象とした保全策を立案する.これに向けて対象種を選定し,サンプリングと遺伝的多型の解析を進めている.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

新型コロナウイルス感染拡大防止のため,全国各地の植物園への対面での聞き取り調査は自粛したが,同様の調査をアンケート調査票のメール配布とオンライン会議ツールを用いて実行した.これにより当初計画していた通り,日本の植物園の生息域外保全における記録管理や分譲の問題点を明らかにすることができた.この結果をとりまとめ,日本植物分類学会(2022年3月)でポスター発表を行った.現在は,メタコレクションの保全手法が日本の植物園の生息域外保全に有効であるかを検証するため,複数分類群を対象種とした遺伝的多型の解析を進めている.
また,本研究に関連して,植物園における生息域外保全の意義と課題を議論した論文(中村・田村, 2022),北海道固有の絶滅危惧植物に関する論文(Tamura et al., 2022)を発表した.

Strategy for Future Research Activity

日本の植物園の生息域外保全の質を高めるために,メタコレクションによる保全手法が有効であるかを検証する.
複数の分類群を対象とし,初めに野生集団の地理的遺伝構造を高解像度の遺伝解析手法を用いて解明する.そして,遺伝的多様性を維持して保全を行うために最適な保全単位を推定する.また,植物園が保有する由来自生地不明の株について,野生集団の遺伝子型と比較して由来自生地の推定を行い,生息域外保全株としての保全価値の回復を試みる.推定した保全単位と各園の保有株の由来自生地情報に基づき,植物園間での保有系統の再配置や野生集団から新たに取り入れる系統の検討を行う.
同時に,他国において複数の植物園が協力して生息域外保全を実施している実例を論文や報告書から収集し,情報が不足する点は保全実施園にアンケート調査を実施する.
他国の実例と,本研究で提案する日本のメタコレクション保全策を比較し,メタコレクション保全策の実施上の課題を検討する.

  • Research Products

    (3 results)

All 2022

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Lectotypification of Saxifraga yuparensis Nosaka (Saxifragaceae)2022

    • Author(s)
      Saya Tamura, Hideki Takahashi, Kohtaroh Shutoh, Ken Sato, Hiroyuki Sato, Takashi Shimamura, Koh Nakamura
    • Journal Title

      Phytotaxa

      Volume: 543 Pages: 95-98

    • DOI

      10.11646/phytotaxa.543.1.10

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 北海道大学植物園が絶滅危惧植物保全に果たす役割とその課題2022

    • Author(s)
      中村剛, 田村紗彩
    • Journal Title

      北方林業

      Volume: 73 Pages: 11-15

  • [Presentation] 植物園の導入・分譲履歴調査から明らかになった日本の域外保全の質的課題2022

    • Author(s)
      田村紗彩, 遊川知久, 中村剛
    • Organizer
      日本植物分類学会第21回大会

URL: 

Published: 2022-12-28   Modified: 2023-08-01  

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