2022 Fiscal Year Annual Research Report
プラトン『国家』篇における「説得」概念と魂論の包括的研究
Project/Area Number |
22J00249
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川島 彬 北海道大学, 文学研究院, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
Keywords | 哲学 / 哲学史 / プラトン / 『国家』 / 魂論 / 政治哲学 / 認識論 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2022年度は、(1)プラトン『国家』に関する研究書の執筆、(2)プロクロス『『国家』注解』の翻訳、(3)英語による研究会の共催に多くの時間を充てた。 (1)『国家』に関する研究書を執筆するために文献を収集し、読み込むとともに、ドラフトを書き上げた。ドラフトは9月と1月に研究会(Zoom)で発表し、コメントに基づいた改稿を行った。現在、出版のための査読を受けている段階である。また、この研究書では扱い切れなかった、『国家』第X巻の魂論に関する研究発表を6月にPAP研究会(札幌)にて行った。発表論文はブラッシュアップの後、ジャーナルに投稿する予定である。その他、『国家』の政治哲学に関する論文、プラトンにおいて数学の学習が魂に与える影響に関する論文を新たに執筆中である。 (2)5世紀の新プラトン主義者プロクロスの『『国家』注解』の中から第四論文と第一論文(どちらも邦訳未刊)を集中的に読み、北大古代哲学のメンバーでギリシア語から訳出した。第四論文の翻訳・注は、『北海道大学文学研究院紀要』から3月に公刊された。第一論文の翻訳・注についても、2023年度中の公刊を目指している。 (3)英語による古代哲学の研究会、Hokkaido Colloquium on Ancient Greek and Roman Philosophyを近藤智彦准教授と共催した(Zoom開催)。今年度は全4回の会合を開き、海外の研究者をお招きして講演をお願いした。それぞれ、復旦大学のTeng He氏(アウグスティヌスの意志論)、陝西師範大学のBobo Zhang氏(プラトン『国家』のトラシュマコス論)、カリフォルニア大学バークレー校のGiovanni Ferrari氏(プラトン『イオン』解釈)、ライデン大学のAiste Celkyte氏(ガレノスの魂論)である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プラトン『国家』に関する研究を順調に進めることができた。特に『国家』関連の研究資料の収集・読解については大きな進捗があり、当初は3年目に予定していた研究書の執筆を前倒しにすることができた。また、共催した英語の研究会を通じて、海外の研究者とも意見交換を行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究書の執筆を通して、『国家』の政治哲学・魂論について、いくつかの重要な論点が浮かび上がってきた。2年目以降で在外研究を行い、これらの論点を掘り下げていく予定である。研究成果の一部は、2023年9月に上海で開かれる研究会において発表する計画である。プロクロスによる『『国家』注解』の翻訳プロジェクトにも引き続き取り組み、『国家』の受容史に関する研究の成果も発信していく予定である。
|