2023 Fiscal Year Research-status Report
プラトン『国家』篇における「説得」概念と魂論の包括的研究
Project/Area Number |
22KJ0038
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川島 彬 北海道大学, 文学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | プラトン / 『国家』 / 〈善〉のイデア / 認識論 / 魂論 / 政治哲学 / 問答法 / プロクロス |
Outline of Annual Research Achievements |
プラトン『国家』の解釈史を辿るため、プロクロス『プラトン『国家』注解』第一論文の訳文の推敲を行ない、『北海道大学文学研究院紀要』から3月に出版した。また、プロクロス『プラトン『国家』注解』第八論文を読み、訳文を作成した。 東北大学出版会の若手出版助成に前年度提出していた原稿及び出版計画書が査読を通過し、著書(『〈善〉のイデアと非命題的なもの──プラトン『国家』』)の出版が決定した。2024年度中の出版契約を結び、査読コメントを受けて改稿した最終原稿を12月に提出した。現在、校正の段階である。同書は、報告者のこれまでの『国家』研究の集大成である。 研究課題と関連の強い実績は、他に以下の通り。英語による研究会Hokkaido Colloquim on Ancient Greek and Roman Philosophyの第5回を開催。フローニンゲン大のAlbert Joosse氏を招き、研究発表していただき、報告者自身も研究発表を行った。Ober, Josiah (2022). The Greeks and the Rational: The Discovery of Practical Reasonの書評を執筆し、『西洋古典学研究』から出版した。 9月、上海にて開催の研究会Symposium on Virtue and Happiness in Ancient Greek and Medieval Philosophyに招待され、研究発表と意見交換を行なった。10月よりユトレヒト大学に滞在し、客員研究員として在外研究中である。1月、ライデン大学にて開催の「プラトンと神話」がテーマの学会に参加し、研究者と意見交換をした。2月、古代哲学研究ネットワーク第2回ワークショップ(北大)に参加し、研究発表を行った。以上の研究発表は、すべてプラトン『国家』に関するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最大の目標だった単著の出版が決定し、国内外で研究発表できるだけの研究成果も蓄積することができた。プロクロスの翻訳も出版できたため、『国家』に関する研究は順調に進展していると言える。海外の研究者との交流を重ねることで新たな課題も見えてきた点も収穫だった。以上から、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
プラトン『国家』の政治哲学と魂論の解明のためには、特に第二巻の「豚の国」の位置づけを考察することがひとつの鍵となることが分かった。すでに関連する文献の調査はほぼ終えたので、このテーマに関する研究をまとめ、ユトレヒトを拠点にヨーロッパで開催の複数の研究会・学会で研究発表を行い、研究者と意見交換をする予定である。4月にライデン大学、7月にバーミンガム大学、8月にローマ大学で研究成果を発表し、コメントをもとにリバイズした原稿を論文として投稿することを目指す。また、日本に帰国後にも2~3件の学会発表を予定している。10月までに著書(『国家』に関するもの)が刊行される予定のため、今年度中に書評会を開催し、研究者から意見を仰ぐ。予想を越える円安のため資金面で苦戦を強いられているが、書籍購入費を一定程度削り研究滞在費に充てることで対応する。
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