2022 Fiscal Year Annual Research Report
地震時海底変位の即時推定に基づく高速かつ高精度な津波即時予測手法の確立
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22J10212
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水谷 歩 北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 津波 / 気象津波 / アレイ解析 / 数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年1月に発生したフンガ-トンガ=フンガ-ハアパイ火山噴火に伴い発生した津波は、第一波の日本への到達時刻が通常の津波から予測されるものよりも2時間程度早く、その発生メカニズムを明らかにすることは重要な課題であるといえる。先行研究では、この第一波は大気ラム波が海面を押すことによって発生した気象津波であると指摘されていた。本研究では、これまで解析の対象となっていなかった第一波と同程度の振幅をもつ後続波の成因に着目し、解析をおこなった。 まず、日本列島太平洋沖に展開された海底津波観測網であるDONETおよびS-netの水圧計を対象に、Vespa解析とおよばれるアレイ解析手法を用いて津波の到達時刻と入射角を推定した。陸上の気圧計記録との比較から、後続波についても第一波と同様に大気波によって励起されていたことが示唆された。 次に、観測された大気波ならびに津波を再現するための数値モデルを作成した。ノーマルモード理論を用いて大気の一次元構造考慮して計算される大気波と、実際の海底地形を考慮した差分法で計算される二次元津波伝播を組み合わせることによって、観測された津波の第一波だけでなく後続波についても、特にその振幅について再現することができた。 また、数値計算の結果をもとに大気波の各モードの津波への寄与を推定したところ、津波の後続波については、同じタイミングで到達した大気波だけでなく、それより早く到達している大気波によって発生した津波が沿岸や海底地形で反射・散乱することによる後続波も寄与していることが示唆された。 なお、これらの成果については国内および海外の学会で発表をおこなっており、国際誌にも投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、水圧計アレイを用いることで、トンガ火山噴火に伴う津波の発生メカニズムを推定することができた。それに加えて観測記録を再現する数値モデルを作成したことで、津波後続波における大気波と海底地形の影響を定量的に明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、直前に発生したトンガ火山噴火に伴い歴史的にも稀な津波が発生したため、後続波の発生メカニズムの推定をおこなった。今後は、地震時海底変位の即時推定手法の確立を目指し、研究をおこなっていく。来年度は、陸上観測網を用いて同様の手法を研究している米国の研究者を訪問し、共同研究をおこなう予定である。海底観測と陸上観測の共通点・相違点に留意しつつ、津波即時予測の改善に取り組む。
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