2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Condition of Stabilized Combustion in Axial-injection End-burning Hybrid Rockets
Project/Area Number |
22J11911
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
深田 真衣 北海道大学, 大学院工学院, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | ハイブリッドロケット / 固体燃焼 / 安定燃焼 / 酸素 / 亜酸化窒素 / アクリル樹脂 / ダムケラー数 |
Outline of Annual Research Achievements |
端面燃焼式ハイブリッドロケットの実現に向けその成立条件である安定燃焼と燃え拡がり燃焼の境界条件を調査するため2022年度は主に燃焼実験を行った。酸化剤には酸素および亜酸化窒素を用いた。これは異なる酸化剤の使用が安定燃焼と燃え拡がり燃焼の境界条件の圧力に対する傾向に影響を及ぼす原因となり得るのかを調査するためである。また燃料には長さや製作方法の異なる4種の形状を、材質は全てアクリル樹脂として用いた。燃料形状を変化させることで、燃焼部における境界層の発達の有無が安定燃焼と燃え拡がり燃焼の境界条件に影響を及ぼすかどうかを確かめた。大気圧から25気圧まで合計で300回程度の実験を行った結果、後者の境界層の発達条件の違いは境界条件に影響を及ぼさない一方で酸化剤が異なると境界条件の圧力に対する傾向が異なることが判明した。 実験から得た以上の結果を元に、酸化剤による圧力依存性の違いが何に起因するのかの原因究明を行った。安定燃焼は流速の高い酸化剤主流部では火炎が維持できない吹き飛び状態である一方、火炎によって燃料が消費されることで形成された流路急拡大部では流速が落ち、火炎が維持できる状態である。そのことに着目し燃焼学分野で用いられるダムケラー数という指標を導入した。ダムケラー数はある物質がその空間にとどまっている時間である滞留時間と化学反応に要する時間との比で表され、消炎現象の指標として用いられている。ダムケラー数を用いて酸素および亜酸化窒素のデータを解析した所、酸素と亜酸化窒素で見られた境界条件の圧力依存性の差の原因として、酸化剤によってアクリル樹脂との化学反応過程が異なる可能性があることが示唆された。修士の研究内容、および本研究結果を2回の国際学会で発表済みであり、今後は論文としてまとめ発表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画では1年目ではAおよびBの二種類の実験を行う予定であった。 実験Aでは種々の長さの燃料を用いて実験を行うことで、境界層の発達度合いが境界条件に影響を与えるかどうかを調査し、影響があれば境界層の発達に必要な燃料長さを特定する予定であった。結果としては予定していた実験終了前に境界層の発達の有無は境界条件に影響を及ぼさないという結論に至ったため、残りの実験は行うことなく結論を出すことができた。 実験Bでは酸化剤の違いが境界条件に与える影響を調査した。酸素と亜酸化窒素それぞれで実験を行った結果、酸素では常に一定値であった境界条件が、亜酸化窒素では圧力によって変化することが判明した。 これら二つの実験の結果から、境界条件の圧力依存性が酸化剤によって異なるという結論を得ることができ、当該年度の目標を達成することができた。 その後行ったダムケラー数を用いた解析の結果、酸素と亜酸化窒素でアクリル樹脂との燃焼反応において化学反応の経路が異なることが原因である可能性を示唆する結果が出た。これは当初2年目に行う予定であった内容であったため、昨年度は当初の計画以上に研究を進めることができたと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までに境界条件の圧力依存性が酸化剤化学種によって異なること、その原因が化学反応経路の違いによる可能性が高いことまでが明らかになっている。今後はこの考察を裏付けるため、ChemkinやFluentといったソフトウェアを使用し、実際に起きていると考えられる化学反応の詳細な調査を試みる。最終的にはその結果をダムケラー数に反映し、どのような酸化剤でも統一的に境界を定義できるような指標を見出すことを目標としている。
|
Research Products
(2 results)