2022 Fiscal Year Annual Research Report
免疫抑制蛋白質HLA-G2のバイオ医薬品開発に向けた分子認識基盤解明
Project/Area Number |
22J12659
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡邊 紘士 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | HLA-G2 / LILR / 免疫抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、免疫抑制蛋白質human leukocyte antigen (HLA)-G2を基盤としたバイオ医薬品開発に向け、ヒト生体内でのHLA-G2作用機序の解明と、特異的抗体を用いた生体内HLA-G2発現量解析系の樹立を目的としている。 今年度は、HLA-G2の生体内での作用機序解明に向け、新規受容体の探索を表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance: SPR)法を用いて行った。その結果、HLA-Gの主要なアイソフォームであるHLA-G1の受容体として過去に報告された受容体について、新規HLA-G2受容体であることを示す結果を得た。また、この同定された新規受容体は細胞外ドメインが複数のドメインから構成されることから、いずれの部位がHLA-G2に寄与するかを明らかにするために、この新規HLA-G2受容体をいくつかのドメインに分け、SPR法によってHLA-G2との相互作用を検証することにより、HLA-G2認識に関与するドメインを同定した。 しかし、この新規受容体はヒト生体内での機能について知見の乏しい蛋白質であり、詳細な機能は不明であった。一方で、この新規受容体が既知HLA-G2受容体leukocyte immunoglobulin-like receptor (LILR) B2と同様にHLA-G2を認識することが明らかになったため、新規受容体がLILRB2に対し、結合競合性を有するかSPR法を用いて検証した。その結果この新規受容体は既知HLA-G2受容体LILRB2と競合的にHLA-G2に結合することが明らかとなった。 また、細胞レベルでの新規受容体によるLILRB2へのアンタゴニスト活性評価を評価するため、LILRB2発現細胞株を用いた細胞アッセイ系を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HLA-G2の新規受容体探索を見出し、解離定数を算出するとともに、結合に関与するドメインを同定した。また、この新規受容体が既知受容体と競合的にHLA-G2に対し結合することを明らかにした。また、このアンタゴニスト作用を細胞レベルで評価するための評価系を構築した。以上の理由から、HLA-G2とその受容体との相互作用による生体内HLA-G2作用機序の解明に向け、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果を踏まえ、今後は、構築した細胞アッセイ系を用いて、HLA-G2-新規受容体相互作用による細胞レベルでのアンタゴニスト活性の評価を目指す。さらに、既に構築済みのLILRB2発現細胞株による系に加え、ヒト末梢血を用いた解析を行うことにより、より詳細なHLA-G2とその受容体を介した機能の解析を進める。 また、新規受容体によるHLA-G2分子認識機構を明らかにするために、複合体構造をX線結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡などの手法を用いて明らかにすることを目指す。 また、生体内HLA-G2発現量解析にむけ、樹立済み新規抗HLA-G2抗体と組換えHLA-G2蛋白質を用いたELISA法、ウェスタンブロッティング法の検出濃度限界を決定することを目指す。
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