2023 Fiscal Year Annual Research Report
超高分子量ポリマーとイオン液体からなる機能性ソフトマテリアルの開拓
Project/Area Number |
22KJ0096
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上山 祐史 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | イオン液体 / 高分子 / 超高分子量 / ゲル / イオンゲル / レオロジー / 溶媒和 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度までに、イオン液体(IL)と超高分子量ポリマーからなる超高分子量イオンゲルの基礎物性を明らかにし、原著論文を執筆、投稿した。このイオンゲルは極めて簡便なone potプロセスで合成でき、(1)500%以上の優れた伸縮性、(2)熱成型によるリサイクル性、(3)室温における迅速な自己修復性といった優れた材料特性を示す。また、自己修復性に及ぼす界面の非平衡性や高分子鎖のコンフォーメーションの影響を分子レベルで明らかにした。 本年度は様々な化学構造のILとモノマーの組み合わせで超高分子量イオンゲルを合成し、本材料設計の汎用性を確認するとともに化学構造-力学物性の相関関係の解明や、さらなる機能化を目的とした。モノマーの側鎖長、ILのイオン半径、酸性度、対称性などを系統変化させた計11種のイオンゲルを合成し、粘弾性、熱物性および力学特性を調べた。今回検討したすべてのイオンゲルにおいて、粘弾性マスターカーブにおけるsol-gel転移は観測されず、優れた形状安定性を示した。イオンゲルの力学特性はアニオン構造もしくはポリマー構造により強く依存し、ヤング率はゲルのガラス転移温度と正の相関を示した。一方、自己修復性はヤング率とトレードオフの関係があるが、一部の組み合わせではこの関係から逸脱し、硬さ以外の要因があることが示唆された。MDシミュレーションによる溶媒和構造解析では、隣接ポリマーの絡み合い確率密度が修復効率と良い相関を示したことから、ポリマー鎖の伸展が自己修復性に影響することがわかった。また、イオンゲルのガラス転移温度を室温付近に調整することで、ガラス転移を利用した形状記憶性が発現し、約30秒の加熱でゲルの形状が完全に初期状態まで戻ることを確認した。以上より、イオンゲルの構成成分の化学構造や組成を変化することで力学特性の精密制御や形状記憶性の発現が可能となった。
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