2022 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanically tunable cell scaffold based on a photo reversible ion gel of azobenzene block copolymer
Project/Area Number |
22J20259
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
猿渡 彩 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
Keywords | 光誘起相溶性スイッチング / 自己組織化 / イオン液体 / 可視光応答性アゾベンゼン / UCST型温度相転移 / 細胞足場材料 / 高分子ゲル / ブロック共重合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
光温度応答性を有するトリブロック共重合体(BCP)と細胞無毒な疎水性イオン液体(NCIL)を複合化したイオンゲルからなる細胞足場材料を創製する。従来のハイドロゲル系細胞足場材料と異なり、疎水性溶媒を用いることで、水溶液である培地との物質交換を防ぎ、長期的な材料安定性ないしは精密な力学スイッチングを担保する。力学特性変化は、BCPの可逆的な自己集合と解離を利用する。すなわち、温度応答性高分子へ光異性化反応を示すアゾベンゼンを導入することにより、trans型、cis型における相転移温度の差を発生させる。細胞培養温度(37℃)で異なる波長の光を照射することで物理架橋点を可逆的に凝集-解離させ、可逆な弾性率変化を達成する。 初年度はまず、NCIL中における疎水性高分子の温度応答性を調査した。興味深いことに汎用ビニルポリマーであるPoly(methyl methacrylate) (PMMA)がNCILである[P8888][TFSI]中で37℃付近にUCST型相転移温度を有することを見出した。次に、光応答性部位の検討を進めた。細胞への低光毒性を念頭に、可視光に応答するメトキシアゾベンゼン(mAzo)のビニルモノマーを新規合成した。mAzoは[P8888][TFSI]中にて可逆な異性化反応が生起し、異性化割合を維持した。本年度の後半は、目的の力学スイッチングを担うP(mAzo-r-MMA)を重合し、[P8888][TFSI]中における温度・光応答性を確認した。得られた高分子のtrans型、およびcis型における相転移温度はそれぞれ37、44℃であった。本高分子が期待通り、生体温度付近でmAzoの光異性化状態に応じて約7℃という広い双安定温度を有することを確認した。さらに一定温度条件下において可視光の切り替えによる可逆な溶解性スイッチングを確認し、可逆な凝集-解離が生起することを実証した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ABA型トリBCPのAブロックに相当する温度/光応答性ユニットを決定すべく、汎用疎水性高分子であるメタ(ア)クリル酸エステル類およびスチレン類のNCILに対する溶解性を調査した。総じて短鎖アルキル側鎖を有するメタ(ア)クリル酸エステルはNCILに相溶あるいはUCST型相転移を示し、長鎖メタ(ア)クリル酸エステルおよびスチレン類は非相溶系を与えた。興味深いことに汎用ビニルポリマーの一種であるPMMAは[P8888][TFSI]中で33℃にてUCST型相転移を示した。以上よりPMMAをAブロックの主骨格に選択した。次に、[P8888][TFSI]中でのmAzoモノマーの可視光応答性を評価した。mAzoは一般的なazobenzeneと異なり、緑色および青色光照射により可逆な光異性化反応を示す。光異性化反応にUV光照射を必要としないため細胞への低い毒性が期待できる。1H-NMRから緑色光照射後cis体~85%、青色光照射後trans体>80 %であった。光照射を繰り返しても異性化割合は減退せず、良好な光可逆性を確認した。 続いて、当初の計画対比先行し、P(mAzo-r-MMA)の[P8888][TFSI]中における温度・光応答性を確認した。本高分子の相転移温度は、trans, cis型でそれぞれ37, 44℃であり、mAzoの光異性化状態に応じてUCSTが約7℃異なることを確認した。さらに一定温度条件下において可視光の切り替えによる相溶性のスイッチングを検討した。P(cis-mAzo-r-MMA)において非相溶状態、P(trans-mAzo-r-MMA)では相溶状態となり、光異性化を駆動力とした高分子の溶解性変化が可逆的に生起することがわかった。以上の結果からP(mAzo-r-MMA)が目的のBCPの動的架橋部位として利用可能であると結論付けた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度はP(mAzo-r-MMA)を両末端に有するABA型トリブロック共重合体を合成し、[P8888][TFSI]と複合化させて得られる材料の特性を評価する。以下に具体的な研究計画を示す。まず、[P8888][TFSI]に相溶するBブロックのポリマー種を決定する。この際、高分子自身の疎水性およびRAFT重合性を考慮に入れて検討を進める。ゲルの粘弾性制御には均一なポリマーネットワーク構造を形成する必要があることから、RAFT重合により分子量分布の狭いABA型トリブロック共重合体をリビングラジカル重合により合成する。次に、得られたポリマーを共溶媒法を用いて[P8888][TFSI]と複合化し、レオメーターを用いて粘弾性の温度依存性および光応答性を評価する。光照射時の相転移温度の差が哺乳類細胞培養温度の37℃をまたぐか、粘弾性制御レンジが100kPa以上あるかによって、ポリマー設計を都度修正し、細胞足場材料に適したイオンゲルを作製する。この際、特にmAzo含有量、PMMA分子量、Bブロックポリマー種、NCIL種等の複合要素を念頭に、温度・光応答性および力学特性の最適化を進める。
|