2022 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical and empirical study on effective and valid reputation assignment rules for cooperation
Project/Area Number |
22J20325
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Research Fellow |
水鳥 翔伍 北海道大学, 文学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 協力 / コーディネーション / 間接互恵性 / 社会的ジレンマ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、間接互恵性を成立させる新たな評価規則として、他個体の戦略タイプをベイズ推定する戦略(以下ベイズ更新戦略)を提案し、これがどの程度頑健に協力を維持できるかを検討する計画であった。しかし、数理モデルを構築していく過程で重要な問題が明らかとなった。なかでも最大のものは無限に遡及する高階信念の問題である。 そこで、ベイズ更新戦略とは異なる戦略として、共有された記号システムを使って行動を組織化する戦略(以下記号戦略)を検討することとした。ここでの記号システムとは構成的ルール(Searle, 2010)の束であり、記号戦略は個体や事象に対して記号(地位機能)を割り当てる。 記号戦略は、間接互恵性に限らず、社会的ジレンマ(以下SD)における協力の達成をも説明できる一般性の高いモデルであると考えることができる。なぜなら、SDにおける協力は適当なサンクションによって達成されうるが、サンクションがおこなわれない状態もまた均衡であり、したがってSDの協力問題はコーディネーション問題だからである。 この戦略からは、相互作用が何という言葉で語られるかがコーディネーションに使用されている可能性が示唆されるため、これを実験で検討することとした。具体的には、サンクション付きのSDゲームにおいて、SDゲームを「コミュニティゲーム」として提示したときのほうが「証券市場ゲーム」として提示したときよりも、罰行使率が高いかを検討する計画である。単純なSDゲームにおいてはこのようなラベル効果を確認した先行研究は海外には存在するが、日本においては無いことがわかった。このため、まず2人囚人のジレンマゲームにおけるラベル効果を確認する追試に着手した。サンプルサイズは200人程度を目標としていたが、参加者の登録が振るわず、令和5年度は60人程度しか収集することができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
サンクションを含むゲームにおけるラベル効果を検討する実験をおこなうことを計画したが、その前段階として単純な囚人のジレンマゲームにおけるラベル効果を検討する追試研究をおこなう必要があった。しかし追試実験の参加者数を十分に確保することができず、追試実験を完了することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
記号戦略の数理モデルの構築と実験を同時並行で進める。実験研究のほうでは、まず2人囚人のジレンマゲームにおけるラベル効果を推定する追試実験について、現在は60人程度しかデータが収集できていないため、引き続き実験をおこない、完了する。その後、サンクション付きのSDゲームにおけるラベル効果の検討をおこなう。
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