2022 Fiscal Year Annual Research Report
予測符号化理論による内受容感覚の生起メカニズムの理解:非侵襲な方法による実証研究
Project/Area Number |
22J20351
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
晴木 祐助 北海道大学, 文学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 内受容感覚 / 予測符号化 / 多感覚統合 / 島皮質 / fMRI / 知覚確信度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は身体内部から生じる感覚,すなわち内受容感覚の知覚成立過程の解明を目指す。具体的には,脳機能の統一理論として注目されている予測符号化処理を内受容感覚の生起メカニズムとして措定し,実験心理学と脳イメージングの方法を組み合わせた実証実験を行う。本年度は主に,選択的注意によって内受容感覚と外受容感覚の感覚信号精度比を変調させる課題を開発し,90名を超える研究ボランティアを対象に実施した。特に内受容感覚への注意と干渉する刺激を呈示することで,内受容感覚の感覚信号精度が視覚・聴覚と比して低いことが明らかとなった。それに加えて,内受容感覚の相対的精度が高まった状態においては,視知覚に関わる確信度が低下することが明らかとなった。これらのことから,内受容感覚と外受容感覚の知覚生成過程が複数の階層において相互に絡み合っていることが示唆された。さらに別の課題として,fMRIによる脳イメージングを用いることで,内受容感覚の中でも心拍に注意を向けた場合と胃に注意を向けた場合の脳活動に大きな差があることを見出した。具体的には心拍知覚は生理的覚醒を表象する右前部島皮質の活性を,胃知覚は視覚野・側頭極・左眼窩前頭皮質・後部海馬などの活性を引き起こした。これらのことは内受容感覚モダリティ内でも感覚信号の相対精度が異なっていることと,それぞれの感覚知覚と結びつく脳領域の存在を示唆している。これらの成果は1本の査読付き論文,2件の国際学会発表,3件の国内学会発表として発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに予定していた複数の行動実験の課題作成・データ収集に取り掛かることができ,十分に解析が進んでいる。そのうち1つの内容はすでに査読前論文として公開されており,もう1つの別の内容が日本認知心理学会で発表され優秀発表賞(新規性評価部門)を得た。さらに今後予定していた脳イメージング研究についても,過去に取得したデータを解析した結果が査読付き英文誌に掲載された。これらのことから,当初の計画を上回る進捗を一部得ている。その一方で本年度開発した課題については,脳イメージングを組み合わせた実験を行うことができなかったため,総合的に本研究課題の進捗状況は(2)おおむね順調に進展している とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に作成した選択的注意によって内受容感覚と外受容感覚の感覚信号精度比を変調させる課題について,実験参加者を充分に増やす。加えてfMRIを用いた脳イメージングを併用することにより,内受容感覚の知覚成立過程を行動・脳活動の観点から検討する。
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