2022 Fiscal Year Annual Research Report
糖鎖ブロック共重合体による脂質ナノ粒子表面修飾を基盤とした遺伝子送達効率の向上
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22J21155
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
李 采訓 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 脂質ナノ粒子 / ブロック共重合体 / ドラッグデリバリー |
Outline of Annual Research Achievements |
COVID-19 に対する mRNA ワクチンに代表されるように、核酸を治療薬とする核酸医薬が最近急速に実用化されている。核酸医薬の実用化には、核酸 (mRNA や siRNA) を血中の分解酵素から保護し、所望の患部へ届けるナノキャリアが不可欠である。そのうち、表面がポリエチレングリコール (PEG) で修飾された脂質ナノ粒子 (LNP) は安定性と血中滞留性が優れるため、多様な核酸医薬のナノキャリアとして使用されている。しかし、PEG 修飾された LNP は繰り返し投与による血中排除 (ABC 効果) やアレルギー反応によるアナフィラキシーショックを誘発する恐れがある。そこで本研究では、糖鎖含有ブロック共重合体 (BCP) をベースとした LNP の調製や構造解析を通じ、現在広く用いられる PEG 修飾 LNP の代替となることを実証し、従来問題となっていた ABC 効果およびアレルギー反応を誘発しない新規遺伝子送達ナノキャリアの開発へと繋げる。 本研究では既存の表面修飾 LNP よりも高い機能性と安全性を獲得するため、表面修飾材料として多様な親水性及び疎水性セグメントの組み合わせから幅広い BCP ライブラリを構築する必要がある。そこで、親水性セグメントに重合度 1-7 のオリゴ糖鎖を、疎水性セグメントにソラネソールやトコフェロールなどの天然由来炭化水素を組み合わせることで糖鎖含有 BCP ライブラリを構築した。さらに、現在は直鎖状 BCP の他、粒子径や表面糖鎖密度の制御の意図した環状及び分岐状のオリゴ糖鎖も検討中である。また、溶液中での LNP の構造を詳細に調べるために高エネルギー加速器研究機構 (つくば) での溶液小角 X 線散乱実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では既存の表面修飾 LNP よりも高い機能性と安全性を獲得するため、表面修飾材料として幅広い BCP ライブラリを構築する必要がある。また、臨床応用には合成の再現性が極めて重要であるため、分子量分布のない糖鎖と疎水性鎖を使用した。そこで、親水性セグメントに重合度 1-7 のオリゴ糖鎖を、疎水性セグメントにソラネソールやトコフェロールなどの天然由来炭化水素を 組み合わせることで糖鎖含有 BCP ライブラリを構築した。化学合成で得られたポリマーは両親媒性を有するため、単離条件の詳細な検討が必要となった。そこで、研究機関の多様な機器を使用することで計画通りに BCP ライブラリを構築した。さらに、糖鎖含有 BCP をベースとした脂質ナノ粒子の調製とマウスを用いた in vivo 実験を行うために、練習実験や試薬と機器の購入なども順調に行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は得られた糖鎖 BCP をベースとした脂質ナノ粒子の調製と in vivo 実験を行う。ナノ粒子作製には mRNA/カチオン性高分子および mRNA/糖鎖 BCP の最適比はそれぞれ 1/9 (モル比) および 1/30 (質量比) であることがわかっており、この比を固定して糖鎖 BCP の種類のみを変更した一連のナノ粒子を調製する。組織移行性を明らかにするため、緑色蛍光たんぱく質 (GFP) コードされた mRNA を、カチオン性高分子としてはアミノ化脂肪族ポリエステルやアミノ化ポリエーテルを用いる。ナノ粒子調製には再現性を確保するため、マイクロデバイスを用いる。ナノ粒子調製後、動的光散乱測定から粒子径が 200 nm 以上である場合や水中での分散安定性が低いナノ粒子は毛細血管を閉塞させるなどのリスクがあるため、in vivo スクリーニングの対象から外し、実験動物の使用数を削減する。次に、in vivo スクリーニングでは、 調製したナノ粒子をマウスへ静脈内投与し、所定時間経過後に各臓器を回収し、GFP 由来の蛍光強度を測定することで組織移行性と遺伝子発現効率を求める。また、蛍光ラベルした mRNA を用いて同様の実験を行い、ナノ粒子の体内分布を調べ、その分布と遺伝子発現した臓器・組織との相関を明らかにする。
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Research Products
(4 results)