2023 Fiscal Year Research-status Report
Urban-eco-evolutionary processes: a linkage between evolution in plant defense and pollination service in cities
Project/Area Number |
22KJ0132
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石黒 智基 北海道大学, 環境科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 都市化 / 植物の都市環境への適応 / 都市における生物の適応進化 / シアン産性能 / シアン配糖体 / 都市景観の不均質性 / シロツメクサ |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、都市における植物の適応進化について論文が1報発行された。シロツメクサの被食防衛形質(シアン産性能)とその産性能の有無を決める構成因子(シアン配糖体と加水分解酵素)に遺伝的変異があることに着目し、都市から郊外にかけての広域一帯における遺伝的変異の空間構造を、非常に細かい密度で調べた。また、GISを用いた解析により、この空間構造を決定すると考えられる景観要素を統計的に推定した。 シアン配糖体生成遺伝子の頻度は、都市中心部ほど低く郊外部にかけて高くなり、非常に明瞭な勾配がみられた。この原因となる景観要素として、周囲に存在する建造物やアスファルトなどの人工地表面の割合が示された。一方、シアン産性能の空間構造はモザイク状であり、被食圧、開空度、人工地表面の割合の3つが要因であることが示された。このように、シアン配糖体生成遺伝子とシアン産性能の空間構造は一致しなかった。シアン配糖体の多機能性(シアン産性能の材料、凍結耐性、乾燥ストレス耐性)と都市景観の不均質性が、進化的形質のモザイク状空間構造を決定していることを示唆している。本結果は、これまで見過ごされていた都市景観の不均質性と形質の多機能性が、都市における生物の進化を決定しうることを示した非常に新しい研究成果である。 しかし、都市によって進化パターンに違いが生じるメカニズムと、適応度の評価に基づく適応進化の実態についてはまだ明らかになっていない。この課題を解決すべく、都市構造の異なる複数の都市を用いたマルチランドスケープアプローチと、相互移植実験による都市進化の実証アプローチを実施した。上記研究の成果について、学会で発表した。また、都市化によって起こるシロツメクサの進化(遺伝子頻度の変化)が送粉系(生態)に与える影響を調べるため、圃場での野外操作実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、都市化が生物の進化に与える影響についての成果発表を行い、論文の出版につながった。また、圃場での野外操作実験を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、前年度に引き続き圃場実験を行う。都市化によって起こるシロツメクサの進化(遺伝子頻度の変化)が送粉系(生態)に与える影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度に使用する試薬について、物価および原材料の高騰によって当初予定よりも高額になることが判明したことから、予算を持ち越しすることによって試薬購入費に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)