2022 Fiscal Year Annual Research Report
Process of flipper formation in secondary aquatic adaptation modeled on morphological evolution in pinnipeds
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22J01704
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
主森 亘 帯広畜産大学, 獣医学研究部門 基礎獣医分野, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 二次的水生適応 / 前ヒレ / 鰭脚類 / 形態進化 / 海生哺乳類 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は鰭脚類の標本を扱う環境を整え,前ヒレのデータ採取に注力した.まず,現生鰭脚類の解剖検体に関して,稚内水産試験所,水産資源研究所(釧路),東京農業大学の協力の下,試料提供の契約を結び本任期内においてコンスタントな標本確保が行える体制を確立することができた.現在,前年度の成果も含め合計47個体の鰭脚類(アシカ科・アザラシ科)の前ヒレの計測および画像データの取得に成功している. また,化石標本に関しても,足寄動物化石博物館にてクリーニング(剖出処理)設備の利用が可能となり,こちらも環境整備を完了させている.埼玉県立自然の博物館に収蔵されている原始的なセイウチ類についても,クリーニングを終了させ,データの取得が済んでいる.現在,記載論文を執筆中である.また,北海道内の博物館における鰭脚類標本の調査も積極的に行った.その結果,鰭脚類と思われる未記載の標本が複数の館で確認された.特に,本研究で有用と考えられる標本が足寄動物化石博物館に収蔵されており,阿寒町の中部中新統殿来層から産出した鰭脚類の体骨格化石についても追加データとして扱える可能性を見出した. 副次的な成果として,オホーツクミュージアム枝幸の下で行ったフィールド調査にて絶滅海生哺乳類デスモスチルスの手根骨と頭蓋骨の一部を採取することができた.同層準から鰭脚類化石の産出も十分に考えられるため,継続的に調査に参加する予定である.こちらに関しても,共同研究者らと発見報告を執筆予定である.また,受入れ機関である帯広畜産大学所属の教員の方々とも精力的なディスカッションを行い,系統進化学的な議論の貢献を行ってカメ類の嗅覚系の共著論文の出版にも至ることができた.これは当初期待していた異分野間での議論による新規研究の創出といえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現生鰭脚類の解剖検体ルートの確立が行えたことは大きな進捗である.これにより,最もネックとなっていた前ヒレのデータ取得がより確実なものとなった.また,骨格標本の作製・保存に関しても複数機関の協力により順調に行えている.化石標本の記載論文に関してはやや遅れが出ているものの,軌道修正が十分に可能な範囲である.地道な博物館調査によって本研究に活用可能な追加標本も見出せている.1年目に目標としていた研究環境の整備と基礎データを構築する体制の確立は達成できたといえる. また,北海道を拠点にしたからこそのフィールドワーク・博物館調査による新標本の発見や異分野である畜産・獣医系に所属したからこその副次的な研究成果も得られており,本制度の利点を最大限に活用できていると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も解剖検体の確保を行い,骨格標本の作製と保存を継続する.また,新たに知床財団による鰭脚類の標本提供の協力も得られる可能性もあり,現在調整中である.化石標本に関しては残りの埼玉県立自然の博物館の標本と新たに見出した足寄動物化石博物館の標本の記載を中心に進める.本年度の主な目標としては取得したデータの解析と3Dデータの取り扱いを十分に進めることである.秋ごろには南オーストラリア博物館(アデレード)にて南半球の鰭脚類の解剖調査および骨格標本調査を行う予定である.現生種のデータ処理を進め,進捗に応じて随時学会発表なども視野に入れる. また,鰭脚類の解剖献体については可能な範囲で複数の研究者と共同活用を模索し,多角的な新規研究の創出を継続して試みる.
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