2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J21368
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
大野 美涼 岩手大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 日長認識 / 開芽 / フェノロジー / カエデ属 |
Outline of Annual Research Achievements |
一部の落葉樹は、春に展葉時期を調節するために日長情報を利用する。申請者のこれまでの研究から、冬季の日長認識の際に、樹種によって日長受容様式(光を受容する器官や各器官への依存度)が異なること、その種間変異が生育する光環境と相関していることが明らかになった。本研究課題は、予備実験から異なる日長受容様式を示すことが期待されるカエデ属属のうち日本に自生する26種を対象に、日長受容様式(光を受容する器官や各器官への依存度)の種間変異が適応進化によって形成されてきたのかを明らかにすることを目的とする。 本年度は、各種の日長受容様式を特定するために、切り枝を用いた器官特異的な遮光実験を実施した。2月に各種の枝を野外から採取し、①冬芽のみを遮光する処理、②枝のみを遮光する処理、③冬芽も枝も全て遮光する処理、④遮光を一切しないコントロール処理の4つの処理間で冬芽の開芽率を比較した。切り枝は全て人工気象器内の同一環境に設置した。その結果、遮光処理の効果は種によって異なり、冬芽のみで光を受容する種、冬芽と枝の両方で光を受容する種、日長を利用しない種といった3タイプに分けられた。また、冬芽と枝の両方で光を受容する種には、冬芽と枝への依存度が同程度の種と、冬芽への依存度が高い種がみられた。これらのことからカエデ属内でも多様な日長受容様式が存在していることが判明し、各種の生育環境に応じて異なる日長受容様式を進化させていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度中に実施予定であった系統樹の作成においては、サンプル採取が完了するにとどまった。そのため、系統樹の作成は次年度に持ち越す。また、各種が生育している光環境の測定においては、COVID-19感染拡大の影響で調査を実施することができず次年度に持ち越すこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度採取した葉のサンプルを用いてカエデ属26種を含む系統樹を作成し、遮光実験により明らかにした各種の日長受容様式の進化過程を解析する。加えて、各種が生育している光環境の調査を行い、日長受容様式と生育している光環境との関連を明らかにする。光環境の調査は、夏季の間に調査地を選定し、開芽直前の時期(3月)に各地点の光の均一性を測定する。
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