2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22KJ0148
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
大野 美涼 岩手大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 日長認識 / 光受容 / 開芽 / フェノロジー / 枝 / 冬芽 / カエデ |
Outline of Annual Research Achievements |
温帯以北に生育する一部の落葉樹は、春の開芽時期を調節するために日長を利用する。申請者のこれまでの研究から、冬季に日長を認識する際に、樹種によって光を受容する器官や各器官への依存度が異なること、その種間変異が生育する光環境と相関していることが明らかになった。本研究では、この日長受容様式の種間変異とその形成要因を明らかにするため、日本に分布するカエデ属26種を対象に、冬季の日長認識に関与する光受容器官の特定と、系統を考慮して生育している光環境や他の環境要因との関連性を検証した。 本年度は、新たにカエデ属3種の生育している光環境の調査と、これまでに光受容器官を特定できていなかったカエデ属7種の光受容器官の特定を行うため、切り枝を用いた器官特異的な遮光実験を実施した。昨年度までの結果と合わせると、日本に自生するカエデ属26種のうち17種の日長受容様式の特定、15種の生育する光環境の測定を終えた。これにより、日本産カエデ属の日長受容様式の多様性の概要と、各種が生育している光環境を把握することができた。加えて、本年度は、光環境以外の要因が光受容器官の種間変異をもたらす可能性を検証した。まず、各種の分布情報をもとに、光環境以外の環境要因(年平均気温や降水量、日照量など)を推定し、冬季の日長認識の際の光受容における各器官への依存度との関連性を検証したところ、生育地の気温や降水量と光受容器官との間に有意な相関は見られなかったのに対し、光環境に関連する要因(光の不均一性や日照時間)は枝による光受容と強く相関することが明らかになった。また、環境要因以外の要因が光受容器官を制限している可能性について、各種の芽鱗と樹皮の透過光や、外樹皮の厚さを測定し、光受容器官との関連性を検証した。
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