2021 Fiscal Year Annual Research Report
個体を用いたタンパク質翻訳の定性・定量解析によるミトコンドリア病発症機序の解明
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21J00143
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
谷 春菜 東北大学, 加齢医学研究所, 特別研究員(PD) (70930303)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / ミトコンドリアゲノム / タンパク質翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアにおけるタンパク翻訳破綻はエネルギー代謝障害を介し、全身性の代謝疾患であるミトコンドリア病の発症原因となることが知られている。しかし、これまでミトコンドリア内の翻訳能を直接的に定量する手段は存在せず、ミトコンドリア翻訳を標的とする治療法や治療薬は開発されていない。 本研究は、ミトコンドリアタンパク質翻訳を可視化する新規ツールの開発により、ミトコンドリアゲノムに生じる病原性変異によるタンパク質翻訳障害の分子機構およびミトコンドリア病をはじめとした様々な代謝疾患の発症原因を明らかにする事を目的としている。これまでに、非典型アミノ酸メチオニンアナログであるAzidnorleucine (Anl) を取り込むことができる変異型Methionyl-tRNA synthetase (MARS)に着目し、変異型MARSをミトコンドリアに局在させることでミトコンドリアタンパク質翻訳をモニタリングする方法を着想し、培養細胞を用いて仮説検証をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、細胞質局在型のMARS1とミトコンドリア局在型のMARS2に様々な変異を導入した変異体を作製し、それらを細胞株に強制発現させることで、ミトコンドリアタンパク翻訳の評価を試みた。当初は、ミトコンドリア局在型のMARS2を標的としていたが、メチオニン結合ポケット形成領域に変異を導入した複数の変異体のいずれにおいても、ミトコンドリアタンパク翻訳を評価しうるレベルに達しなかった。そこで、細胞質局在型の変異型MARS1にミトコンドリア移行配列を付加したところ、ミトコンドリア内への移行、および、一部のミトコンドリアにおけるAnlの取り込みを確認することに成功し、本技術の改良を重ねることでミトコンドリア内のタンパク質翻訳のモニタリングに有用であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、変異型MARS1の発現量や細胞の染色条件を改良することで、変異型MARS1のミトコンドリアへの局在およびAnlの取り込み活性に対する最適化を図る。また、現時点ではAnlの取り込みについて細胞の蛍光染色でのみ観察しているが、in-gel染色やLC-MS/MS解析により再現性の確認を行った上で、定量性の高い手法を検討する。加えて、クロラムフェニコールを作用させることでミトコンドリア翻訳を阻害した細胞株や、病原性変異型mtDNAを優位に有する患者由来の細胞株に対し、ミトコンドリア翻訳の可視化に最適化した変異型MARS1を導入することで、ミトコンドリア翻訳不全の定量化を試みる。
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