2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22KJ0166
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坂尾 珠和 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 実験核物理 / ハイパー核物理 / ストレンジネス / ハイペロン核子散乱 / J-PARC |
Outline of Annual Research Achievements |
原子核物理学では核力の性質を解明することが長年の課題である。核子はスピン1/2のオクテット・バリオンに属しており、これらの粒子の間に働く力「バリオン間(BB)相互作用」をsクォークを含めたSU(3)フレーバー対称性のもとで系統的に調べることが重要である。本研究では、過去技術的困難さ故にデータが不足していたハイペロン核子(YN)散乱実験を行うことで、YN2体相互作用を直接精密測定し、現実的な2体力の構築の一助となることを目標としている。J-PARC E40の後続実験として計画されたJ-PARC E86では、Λp散乱の微分断面積とスピン観測量を高精度に測定する予定である。YN散乱の微分断面積導出手法はJ-PARC E40で既に確立されたが、スピン観測量の測定手法は未開拓であった。まず初めに、我々は偏極したハイペロンビームの偏極度の測定手法の確立を第一目標に定めた。
本年度では、J-PARC E40で取得されたπ-p→K0Λ反応データを用いてΛ偏極度の測定手法を開発するとともに、その値を高精度に導出することに成功した。解析の結果、K0散乱角度領域0.6<cosθ(K0,CM)<0.85において平均Λビーム偏極度が0.932であり、ほぼ100%偏極していることがわかった。これより、J-PARC E86でも特定のK0散乱角度を選択することで非常に高く偏極したΛビームを用いてΛp散乱スピン観測量を測定することができると結論づけた。さらに、Λp散乱事象同定手法も同データを用いて行い微分断面積の概算を行った結果、過去の実験値とオーダーの範囲内で一致する結果が得られた。このことから、本研究で開発したΛp散乱事象同定手法の妥当性を実証することができた。
MPPC読み出し用国産汎用ASICの評価基板(RAYRAW)は試作機が無事納品され、2024年度にテスト実験を行なって性能評価を行う予定である。
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Research Products
(3 results)