2022 Fiscal Year Annual Research Report
3次元微細構造観察と数値解析による海洋リソスフィア含水化の時空間発展の解明
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21J20281
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 一貴 東北大学, 環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 岩石ー水反応 / 蛇紋岩 / オマーンオフィオライト / 微細構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、2021年度の研究で発見した鉱物脈をより詳細に分析した。微量元素分析の結果、鉱物脈は沈み込みに伴う流体放出によって形成されたことが示唆された。また、熱力学計算および物質移動モデリングによって、鉱物脈を形成した流体の活動期間と移動速度を制約した。その結果、この鉱物脈は短期間(数か月から数年)で高速の流体(秒速0.1~1cm)が流れた痕跡であることがわかった。さらに、現在の沈み込み帯で観測されている微小地震の継続時間や震源の移動速度と類似していることから、地下深部における流体移動現象の痕跡であり、地震活動と流体活動との関連が示唆された。これらの結果は、学会で発表したほか、国際誌に掲載された。また、蛇紋岩化反応における水素の発生量を概算するために、蛇紋岩化に含まれる鉄の酸化還元状態を調べた。鉄の酸化還元状態を調べるために,X線微細構造解析を行った.まず、鉄の酸化還元状態が既知である標準試料の測定を行い、基本的な手法を確立した。つづいて、オマーンオフィオライトの蛇紋岩粉末試料を測定し、全岩の鉄の酸化還元状態を調べた。これらの分析から、蛇紋石に相当量の3価の鉄が含まれていることが明らかとなった。このことは、マグネタイトを生成しにくい条件でも、水素が発生する可能性を示唆する。これらの成果は学会で発表し、現在論文を準備中である。さらに、鉱物の溶解―析出とそれに伴う体積変化による破壊現象を調べるために、離散要素法を用いた数値シミュレーションモデルの改良を行った。これまでのモデルでは単純な置換反応を仮定しており、鉱物の析出―溶解反応は考慮されていなかった。溶解反応と析出反応を個別に導入することで、鉱物の溶解―析出反応を考慮したモデルの開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度に発見したアンチゴライト脈の詳細な分析から、オマーンオフィオライトのマントル岩石の蛇紋岩化ステージに関する制約と蛇紋岩のき裂を流れる流体の時間スケールと流体移動速度を推定することができた。また、離散要素法を用いた岩石組織の数値シミュレーションを改良し、鉱物の溶解―析出反応を組み込んだコードを開発した。2022年度に行った実験では、トレーサーとしてヨウ化カリウム溶液を用いたが、蛇紋岩に含まれる空隙が小さいため、コントラストが予想よりも小さかったが、予察的な結果が得られたためおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2022年度に開発した新たな数値シミュレーションコードを用いて、岩石組織の時間発展を明らかにする。溶解反応と析出反応の速度の違いが、岩石組織にどのような影響を与えるのか明らかにする。また、蛇紋岩の流体移動経路について、トレーサー試験および微細構造解析を継続して行う。2023年度は、トレーサーとしてより高いX線吸収係数をもつ物質を用いる予定である。蛇紋岩組織の微細構造解析は継続し行い、トレーサー試験の結果と合わせることで、蛇紋岩における流体移動経路を明らかにする。オマーンオフィオライトの岩石に対して、鉄の酸化還元状態の測定を行い、海洋底における水素発生ポテンシャルを明らかにする。
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Research Products
(9 results)