2021 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト誘導性肺前駆細胞を用いた組織工学的手法による肺の再生
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21J21515
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
冨山 史子 東北大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 誘導性前駆細胞 / 肺上皮前駆細胞 / 血管内皮前駆細胞 / 初期化誘導 / mRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度はヒト血管内皮細胞と肺上皮細胞から誘導性前駆細胞を作成することに取り組んだ。山中因子をそれぞれの細胞に一時的に導入し、多能性に至る前に止めることで、元の細胞の特性を備えたまま増殖する細胞を作成する試みである。当初はマウス細胞への誘導に使われていたウイルスベクターを使用することを検討していたが、ゲノム挿入の危険性がない点・効率が良い点を考慮し、mRNAを用いた誘導を試みることとした。 まずHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)に山中因子のmRNAを、リポフェクタミンを用いて導入した。幹細胞用培地で培養すると細胞の増殖能は亢進した。フローサイトメトリー・定量PCRでの解析により、血管内皮マーカーであるVECAD・CD31は消失したが、Tie2は残存していた。増殖するが血管内皮の特性は一部保っているという特徴から、誘導された細胞は誘導性血管内皮前駆細胞の性質を持っていると考えられた。得られた細胞を血管内皮用培地で培養し再分化を誘導すると、VECAD、CD31などの血管内皮マーカーが回復することが示された。この実験から、mRNAをヒト血管内皮細胞に用いても、ウイルスベクターをマウス細胞に用いた場合と同様の前駆細胞様細胞が誘導されることが示された。再分化誘導の後も初期化因子の発現が残ることは今後の課題と考えられた。 続いて、SAEC(ヒト小気道上皮細胞)に山中因子のmRNAを導入した。iPS細胞様のコロニーが出現し、長期に継代することができた。誘導された細胞は初期化因子を発現してはいるものの、EpCAMなど一部のマーカーの発現がiPS細胞とは異なっていた。また、SAECでは発現しないSpCの発現が一部見られており、iPS細胞とSAECの中間の状態を経由した可能性が示唆された。今後蛍光顕微鏡等を用いてこの細胞の特性を詳しく解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画作成時には初期化因子の導入にウイルスベクターを使用することを考えていたが、安全性と効率性を考えmRNAを使用した方法で実験を行なった。特に血管内皮細胞ではウイルスベクターを使用した場合と類似した結果が得られ、増殖するが血管内皮細胞のマーカーを一部残した誘導性前駆細胞が得られている。肺上皮細胞では血管内皮細胞ほど予測された結果ではないものの、iPS細胞とも元の上皮細胞とも異なる細胞が得られており、表面マーカー等から分化の段階を検証する方向に進めている。当初一年目に予定していた肺上皮・肺血管内皮前駆細胞を得るという点では概ね順調であると言える。次年度に行うバイオリアクターへ上皮・血管内皮細胞を導入する準備も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
誘導性肺前駆細胞を用いた再生肺の作成・評価のためには以下の実験が必要と考えている。 誘導性前駆細胞の検証・誘導性前駆細胞を用いたin vitroでの機能評価・マウス脱細胞化肺を用いた3-Dでの検証である。誘導性前駆細胞の検証に関しては蛍光顕微鏡等も用いたマーカー発現の解析・確認が必要である。また、細胞の増殖能・分化能を最適化するためにプロトコルを一部変更し、より短期間の誘導を行うことも検討している。 誘導性前駆細胞を用いたin vitro での機能評価は具体的にはゲルやマイクロ流路を用いた血管形成能評価を考えている。 マウスの脱細胞化肺を用いた3-Dでの検証に関しては、マウス脱細胞化手法と再細胞化条件の最適化を行い、バイオリアクターを用いて脱細胞化肺に誘導された細胞を生着させる。脱細胞化肺上で培養された細胞を平板培養上の細胞と比較することで3D培養による細胞分化等の変化を検証する。
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Research Products
(1 results)