2022 Fiscal Year Annual Research Report
実解析的手法による粘性流体に対するエネルギー保存性と正則性の解析
Project/Area Number |
22J10378
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Research Fellow |
青木 基記 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | 温度付き圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式 / エネルギー保存則 / 初期値問題の非適切性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では, 温度付き圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式の解が滑らかになるための条件とエネルギー保存則の関係性を解明することを目的として以下の研究を行なった. 1つ目の課題として, 温度付きナヴィエ・ストークス方程式の解がエネルギーを保存するための密度関数と速度場が満たすべき数理的条件について明らかにした. 具体的には, 試験関数法と呼ばれる手法を用いて圧縮性流体がエネルギーを保存するための密度と速度場の正則性条件について定式化を行った. 2つ目の課題として, 理想気体の運動を表す温度付き圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式の初期値問題の適切性の問題に取り組んだ. 具体的には, ある臨界空間における温度付き圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式の初期値問題が非適切になることを明らかにした. 上記の結果は, 理想気体に対してはエネルギー保存則の条件と初期値問題の適切性の条件に包含関係が成り立たないことを示唆している. 実際, 今回得られた初期値問題の非適切性の空間とエネルギー保存則の空間について, 密度関数と速度場の条件を比較すると, エネルギーを保存するための空間が初期値問題の非適切性が示されている空間を包含している. ここで, 温度の空間には包含関係はない. しかし, その点を除くと, 類似した条件でエネルギーが保存する肯定的な結果と初期値問題が非適切になる否定的な結果が得られている. この違いは, 初期値問題で非適切性を誘発する非線形項が流速の摩擦によって生じる項であるため, エネルギーの枠組みでは内部エネルギーの相互作用により消失することに起因している. 本研究では, 初期値問題の非適切性を明らかにし, エネルギー保存則の条件と比較することで, 温度付き圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式特有の性質について明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請課題では, 温度付き圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式の解がエネルギーを保存するための十分条件と解の正則性の関係性について研究を行った. 具体的には, 本研究を通して周期境界条件における温度付き圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式の弱解がエネルギーを保存するための密度関数と速度場の十分条件について明らかにした. 上記の研究で考察した一部の十分条件が初期値問題の適切性の問題と密接に関わっていることが研究遂行中に判明した. そこで, 本研究の条件と初期値問題の適切性の関係性を解明するために, 理想気体の運動を表す温度付き圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式の初期値問題の解明する必要が生じた. 本研究では, ある臨界ベソフ空間における温度付き圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式の初期値問題の非適切性について明らかにし, 本研究課題を推進した. 一方で, 本年度得られた研究成果は領域を周期境界条件や全空間での成果にとどまっている. 従って, 有界領域をはじめとした領域上における圧縮性粘性流体のエネルギー保存条件や解の正則性については明らかにできていない. また, エネルギー保存則が成立するための十分条件に関する研究も, 非圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式における同様の研究と比較しても進展できる可能性がある. しかし, 初期値問題やエネルギー保存条件で用いた空間はベソフ空間と呼ばれる調和解析的手法を用いて構成される空間であり, 領域上における解析が困難であることが判明した. 従って, 本研究を推進するために領域上におけるベソフ空間を導入する必要が生じた.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として, 近年研究が盛んに行われている領域上のベソフ空間の導入が挙げられる. 調和解析的手法を用いることが困難なため, 領域におけるベソフ空間は実解析手法により特徴付けられてきた. 近年, スペクトル解析を用いて領域上のベソフ空間を特徴付ける研究が推進されている. そこで, 本手法で特徴づけられたベソフ空間を用いて非線形項の双線形評価並びに交換子評価の導出から始める.
|