2022 Fiscal Year Annual Research Report
創エネルギーとリン回収が可能な低炭素型下水処理システムの開発
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22J10691
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
葉 敏 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 下水処理システム / 低炭素 / 嫌気性MBR / リン / 有機物捕捉 / 鉄凝集剤 / エネルギー / 膜汚染 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の研究は3つの部分で構成されている。2022年度全体的な研究は完了し、成果も得られたが、初期に研究しただけの部分もあり、まだ次年度にさらに深く研究する必要がある。 1. 汚水中の有機物とリンを捕捉する研究において、多因子の回分実験を行った。実験の結果として、最適な鉄系凝集剤投入量は30 mg/Lであり、この条件ではCODを80%、リンを9%捕捉することができた。下水のSSを94%除去でき、pHを0.7程度で低下させた。来年度には再生鉄系凝集剤の有効性に関する実験も行う予定である。 2. 鉄系凝集沈殿汚泥の処理とバイオエネルギー回収のための嫌気性MBRの使用に関する研究では、連続的な長期実験により、鉄系凝沈汚泥のメタン生成率が約220 mL/g-CODに達したことが明らかになった。物質収支分析を行った結果、汚水中の有機物の回収により、システムのエネルギー回収量が大幅に増加することが明らかになった。また、鉄系凝沈汚泥消化プロセスによる膜汚染メカニズムを分析した結果、鉄と硫黄・リンの組み合わせが膜汚染の主因であり、定期的な膜洗浄することは膜運転を維持する必要がある。 3. 消化汚泥のリン回収と鉄系凝集剤再生について、回分実験で検討を行い、低pHで鉄凝集剤の回収に効果があることを明らかにした。 以上の結果を踏まえ、関連論文と比較して考察し、4本英語論文と1本日本語論文を発表できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外の関連文献を多数参照したうえで、多数の回分実験と長期メタン生成実験を設計・実施した。鉄系凝集沈殿実験においては、有機物やリンの捕捉に最適な条件を導き出し、連続流嫌気性MBRの運転においては、鉄系凝沈汚泥のメタン生成効率を把握するとともに、システムのエネルギー回収効率と膜汚染のメカニズム解析を行った。このため、当初の研究計画に掲げた主要な実験内容を完遂したといえる。ただし、予備的な実験準備や特殊な微生物培養の難しさにより、研究内容の一つである消化汚泥のリン回収と鉄系凝集剤再生については、まだ十分にされておらず、現在は予備調査の段階にとどまっている。このため、この部分に関する実験内容については、次年度に実施する予定ある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度未完了のテーマについて、その内容や問題点についてさらに関連研究を行う。 まず、消化汚泥からのリン結晶の回収である。消化汚泥を磁気分離によりさらに分離し、藍鉄鉱結晶を得る。結晶形態と粒径分布を走査電子顕微鏡で評価し、最後に結晶の結晶性と純度をX線回折装置で特性評価する。消化汚泥の好気性酸化については、生物酸化によるpHへの影響や鉄の溶出効果を調べるための追加回分実験が必要であり、再生鉄系凝集剤については、原水の凝集沈殿実験を行ってその効果を検証している。 なお、主流と副流の一槽式Anammoxの協同脱窒と細菌造粒および群集の共生関係を解析する予定である。2つの並行長期連続反応槽を運転し、水理的滞留時間、溶存酸素、窒素負荷などのパラメーターを段階的に調整し、主流と副流の一槽式Anammoxの脱窒効率と安定性を向上させる。異なる濃度の鉄イオンの作用下での細菌細胞造粒の外観と沈降性能を調査する。蛍光in-situハイブリダイゼーション (FISH) 法によりグラニュール汚泥における共生細菌の空間分布を分析する。 さらに、 LCA法による新規下水処理システムの評価を行う予定である。ISO評価基準に基づいて、下水処理施設の環境影響評価に使用されるLCAには、目標と範囲の定義、リスト分析、影響評価、結果分析、影響改善の5つの段階がある。課題の実験データに基づいて、新規システムの環境負荷を定量化し、重要な影響要因を分析し、システムを最適化するための計画を立てる。
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