2022 Fiscal Year Annual Research Report
希少耐食元素を濃化領域として活用した新規高耐食ステンレス鋼の創製
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22J11168
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齋藤 遥 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 高耐食化 / ステンレス鋼 / モリブデン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、耐孔食性を向上させる代表的な元素であるMoを、ステンレス鋼中に「固溶」ではなく「第二相化」した、高耐食ステンレス鋼の開発に取り組んだ。SUS304Lステンレス鋼の粉末と純Moの粉末を混合・焼結し、Mo濃化組織を含有するステンレス鋼を作製した。作製鋼に対して、耐食性に及ぼす熱処理条件とMoの添加量の影響を評価し、耐食性向上のための金属組織の条件を明らかにした。焼結鋼に対して、高温で長時間の熱処理を施すと、MoとCrが濃縮したBCC相と、Niが濃縮したFCC相からなるMo濃化組織が形成されることを見出した。また、熱処理温度の上昇や、Moの添加量の増加に伴い、Mo濃化領域の割合が増加した。作製したステンレス鋼は、従来のSUS316L焼結ステンレス鋼よりも高い耐食性を示した。特にMo濃化領域の体積分率が高くなるほど、孔食電位が上昇することを見出した。BCC相とFCC相のモデル合金を作製し、それぞれNaCl水溶液中での動電位アノード分極曲線の測定を行い、各相の溶解挙動を調査した。Mo濃化領域中のBCC相は、MoとCrが濃縮しているために耐食性が非常に高く、孔食成長のバリアとなる可能性が示唆された。したがって、Mo濃化領域の割合が増加することにより、孔食の成長が初期の段階で抑制されるため、高い耐孔食性が得られたと考えられる。また、定電流分極測定を行うことにより、孔食起点が母相であることを明らかにし、Mo濃化領域は孔食の起点とならないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、Mo濃化領域を有するステンレス鋼を開発に成功した。また、高耐食化のためのMo濃化領域の作製条件の検討を行い、Mo濃化領域の割合が増加するほど、耐食性が向上することを見出した。今後の新たな防食技術の確立に向けた指針を見出したことから、順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で成果を得られた、Mo濃化領域を利用した高耐食化ステンレス鋼では、「孔食成長」に対する抑制効果を得られることができた。今後は、「孔食発生」の抑制機能を有する高耐食ステンレス鋼の開発に取り組み、濃化領域を利用した、新たな高耐食化機構を確立する。
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Research Products
(4 results)