2023 Fiscal Year Annual Research Report
自己修復するトライボ膜の制御に向けた反応分子動力学法の開発と低摩擦界面の学理構築
Project/Area Number |
22KJ0268
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川浦 正之 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 摩擦 / トライボロジー / トライボフィルム / 水潤滑 / 分子動力学シミュレーション / 計算材料科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
エネルギー損失を防ぐために、摩擦を低減させることが求められている。摩擦の大きさは材料表面の状態に影響を受けるが、摩擦自体によって表面変質層が発生し、摩擦特性が変わる。本研究ではこの表面変質層の制御に向け、化学反応を解析することが出来る反応分子動力学法(反応MD)を用いた摩擦界面構造解析を実施した。 炭化ケイ素は、水だけで超低摩擦を実現する材料として注目されている。従来、低摩擦は摩擦界面での化学反応によって形成されるトライボフィルムが由来であり、これは真実接触面上に局所的に形成され、凝着を防ぐ炭素層と、コロイダルシリカ潤滑膜から構成されることが分かっていたが、トライボフィルムが界面に維持される機構は未解明であった。本研究では、反応MDを用いてトライボフィルムが維持される過程を解析した。その結果、コロイダルシリカ潤滑膜が摩擦によって界面から排出され、表面の凸部同士の接触が起こると凸部に形成されている炭素層が凝着を抑制する。同時に、それ以外の炭化ケイ素表面領域において水分子との化学反応が進行し、潤滑膜が生成され続ける。これによって、低摩擦を維持しつつも新たなトライボフィルムが生成され続けるという機構を明らかにした。 また、金属材料表面の表面テクスチャによってもたらされる変質層の解析を実施した。従来は数万原子数程度で実施されてきた反応MDを大規模化し、100万原子規模の計算を、アルミニウム基板を用いて行った。その結果、摩擦によってテクスチャの凹部に凸部が押し込まれることで残留応力が生じ、アルミニウム基板が面心立方構造から体心立方構造に変化することを明らかにした。また、ナノサイズの結晶粒が摩擦によって応力誘起の粒成長を生じることを明らかにした。これらの金属材料における表面変質層は、材料の硬度の上昇をもたらすと考えられ、摩擦界面の接触面を減少させ低摩擦につながると考えられる。
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