2022 Fiscal Year Annual Research Report
大気乱流分布を組み込んだ高精度レーザートモグラフィによる可視光補償光学
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22J14095
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大金 原 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 補償光学 / 大気揺らぎ / トモグラフィー / 波面センサー / 乱流測定 / シーイング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地球大気乱流の高度方向分布を先験情報として利用することによる、レーザートモグラフィ補償光学の波面推定精度の向上を目的としている。2022年度は、大気乱流プロファイラーの試験観測を国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡において実施し、すばる望遠鏡サイトにおける大気揺らぎのデータを取得した。 大気乱流プロファイラーは、次世代の補償光学開発・運用において重要な大気揺らぎの高度方向分布を測定する、2つのShack-Hartmannセンサーからなる光学装置である。我々は2021年度までに本装置の開発をハワイ観測所にて進めてきた。本年度は、すばる望遠鏡に搭載した試験観測を2022年6月、同11月、2023年3月に5度にわたって実施した。天候不順や望遠鏡のトラブルにより観測ができない回が多かったものの、最終的に2度の試験観測に成功した。装置が設計通りの光学性能を有することを示すとともに、大気揺らぎの測定データを得ることができた。SH-MASS解析によって推定された上層大気揺らぎはCFHT望遠鏡における測定結果と整合的であり、我々の独自手法であるSH-MASS手法の妥当性を支持する結果が得られた。また、SLODAR解析によって推定された地表層大気揺らぎは、望遠鏡のドーム内に揺らぎの大部分が集中していることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、開発した大気乱流プロファイラー光学系によって、すばる望遠鏡サイトの大気揺らぎを定量的に測定できることが分かった。今後さらに追加の測定を行い統計的な振る舞いを理解してゆく上で、本研究の完遂に向けた重要な測定環境が整ったことになる。天候等のトラブルもあり本年度の測定成功率は決して高いとは言えないが、装置の開発における問題はなく初観測を成功できたという事実を鑑み、おおむね順調であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本年度に得られたデータを解析した結果を取りまとめ、学術論文として発表する。また追加のデータ取得として、5月および11月の試験観測を申請する予定である。2年間で得られたデータの解析をもとにすばる望遠鏡における大気揺らぎの特徴づけを行う。さらに、補償光学シミュレーションを通して大気乱流の高度分布と補償性能との関係を調べていく。
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