2022 Fiscal Year Annual Research Report
ダイコン自然集団におけるS対立遺伝子の新規同定を踏まえたその多様性維持機構の解明
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22J21263
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福島 和紀 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 自家不和合性 / ハマダイコン / S対立遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
既知のプライマーセットによってSRKの増幅が起こらず、S対立遺伝子の同定が不可能であったハマダイコン個体について、ナノポアシーケンサーによるゲノム配列の決定を行なった。既知のSRKの塩基配列を用いたBLASTにより、同定不可能であったSRKの領域を見つけ、塩基配列を決定した。SRKの塩基配列をマルチプルアライメントによって比較すると、既知のプライマーセットで増幅できなかった原因は、リバースプライマーの設計領域に存在した数塩基のミスマッチであることが考えられた。これを修正したプライマーを用いることで、SRKの増幅が改善された。また、class-IIに属するSRKについては、別の遺伝子であるSRK-like遺伝子が同時に増幅されることで、SRKの同定に問題が生じていた。同様にナノポアで決定したゲノム配列からSRK-like遺伝子の配列を見つけ、SRKとの比較からプライマーを再設計することでSRK-like遺伝子の増幅を抑えることができ、この問題は解決された。 また、石川県南加賀地方のハマダイコン集団に応用した解析では、新しく設計したプライマーセットの有効性が確認でき、採取地点ごとのS対立遺伝子構成の比較にまで発展させることができた。 自然集団における交配のメカニズムを理解するには、受粉後に生じる反応の分子メカニズムの解明も重要であることから、シロイヌナズナを用いた花粉吸水時のライブイメージング系を立ち上げた。花粉吸水に重要であると考えられる乳頭細胞内の液胞膜を可視化し、受粉前後の動態の比較を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来使われていたプライマーセットではPCR増幅が起こらず、同定することができなかったS対立遺伝子を持つハマダイコン個体のゲノム配列をナノポアシーケンサーによって決定した。決定したゲノム配列からS遺伝子座を特定し、PCR増幅が起こらなかった原因を見出した。配列情報をもとに新たなプライマーセットを設計することで、PCR増幅が改善され、S対立遺伝子の決定率を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新規に設計したプライマーセットではS対立遺伝子の決定に改善がみられたが、すべてのS対立遺伝子を同定するには至らなかった。そこで、既知のS対立遺伝子のゲノム配列との比較解析から同定不可能であったS対立遺伝子の配列的な特徴をさらに見出す。その配列的な特徴をもとに、自然集団において同定不可能であったS対立遺伝子を簡易的に同定できる方法を確立する。同定不可能であったS対立遺伝子特異的な配列を特異的に増幅できるプライマーを設計し、PCR法によって検出する。増幅された配列はサンガーシーケンシングを行い、目的の配列が増幅されていることを確認する。 また、シロイヌナズナにおける花粉吸水時の乳頭細胞内液胞膜のライブイメージングから吸水反応に重要であると考えられる現象を新たに見出したため、化合物処理や変異体を用いた解析によって花粉吸水に対する液胞の機能を解析する。
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