2023 Fiscal Year Research-status Report
オペランドタイコグラフィ-XAFS法の開発と蓄電材料の構造機能相関解析への展開
Project/Area Number |
22KJ0301
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上松 英司 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
Keywords | タイコグラフィ-XAFS法 / Liイオン電池正極活物質 / オペランド計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、充放電のその場、すなわちオペランドでのタイコグラフィ-XAFS計測を実現するために、充放電可能なタイコグラフィ-XAFS計測用オペランド電池セルの開発に取り組んだ。そして、大型放射光施設SPring-8でオペランド計測を実施した。 タイコグラフィ-XAFS計測可能なオペランド計測セルに求められる要素として、(1)光路上にターゲット試料以外のX線散乱を生じる要素を極力排除すること、(2)試料が電気化学的に反応すること、(3)電解液を透過後のX線強度が十分に確保できることが挙げられる。そこで、X線透過窓を有するSiNメンブレン上に正極部および負極部となる電極をTiのパターン成膜によって作製し、SiNメンブレンを用いて電解液を挟む形となる電池セルを設計した。また、電気化学実験を行い、電解液を挟む隙間が狭くなるほど、試料の電気化学反応が阻害されることがわかった。この電気化学反応の阻害を考慮した上で、光路上の電解液長さをX線減衰率50 %程度となるように設計を行なった。計測において、作製したメンブレンの負極には負極材としてLi0.1FePO4スラリーを塗布し、X線透過窓上の正極部には計測ターゲットとしてLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2 (NMC622) 粒子を分散してLiTFSI電解液とともに電池セルに封入した。そして、充放電が可能なことを確認した後、タイコグラフィ-XAFS計測に供した。計測はSPring-8 BL29XUにて行った。計測を行った結果、60 nmよりも優れた空間分解能を有する試料吸収像、位相像の取得に成功した。ただし、計測をさらに進めていく過程で、電解液および担持材に対する放射線損傷による試料像変化が観察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定では、オペランドタイコグラフィ-XAFS計測を実施し、ピクセルごとのXAFSスペクトルを解析することによりNi価数の分布の充放電に伴う変化の可視化を実現する予定であったが、放射線損傷の問題に直面し実現することができなかったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
放射線損傷が生じない範囲での計測条件の検討、すなわち露光時間、測定点数、集光径などの検討とともに、電解液フローとなる構造を有するタイコグラフィ-XAFS計測用オペランド電池セル開発の検討を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
国際会議への参加を行わなかったため、余剰金が生じた。余剰金については、物品購入および学会参加に関する予算に充てる予定である。
|