2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J22178
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石橋 一晃 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 光-スピン変換 / 光渦 / 円偏光 / スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
光の角運動量の物質への転写、いわゆる光-スピン変換が高効率・高速な磁化制御手段として期待されている。本研究では、スピンおよび軌道角運動量を持つ光である円偏光と光渦を用いた新規光-スピン変換現象の探索および原理の解明を目的とした。当初の実験計画とは若干異なるが、本年度はパルスレーザー誘起テラヘルツ波放射を用いてビスマス(Bi)における円偏光-スピン変換の原理解明に注力した。 近年Biにおける光-スピン変換由来のテラヘルツ波放射が報告されているが、光-スピン変換と電流-スピン変換の2つが同時に起こるために詳細が明らかではない。そこで、これら2つのスピン変換効果を分離するために、Biと典型的な強磁性体であるコバルト(Co)の二層膜における2種のテラヘルツ波放射の測定を実施した。 その結果、Biにおける光-スピン変換とCoの超高速減磁によって生成される2種のスピン流ではスピン輸送特性が大きく異なることが実験およびシミュレーションによって明らかとなった。Biにおける光-スピン変換由来スピン流のスピン拡散長は1桁長く、光励起キャリアとフェルミレベル近傍のキャリアのスピン輸送特性の違いを反映していることが示唆された。これらはBiの半金属的な性質が関与していると考えられる。高効率なスピン変換が期待されるBiにおいて、重要な知見が得られた。以上の成果をPhysical Review Bに投稿(2023年度公開)した。学会発表に関しては、国際学会に4度、国内学会に2度参加し、口頭およびポスター発表にて成果報告をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画として、パルスレーザー誘起テラヘルツ(THz)放射測定系および連続波レーザー誘起-DC電流検出の測定系を用いた円偏光による光-スピン変換の定量評価を予定していた。まず、ビスマス(Bi)/コバルト(Co)二層膜を作製し、レーザー誘起THz放射波測定を実施した。予想外に、超高速減磁誘起スピン流と光-スピン変換誘起スピン流のBi膜厚依存性が大きく異なることが観測された。本年度はこの物理の解明に努めることとした。 膜厚依存性を詳細に議論するために、様々にスピン拡散パラメータを変えてスピン拡散方程式を基にしたシミュレーションを実施した。その結果、Biにおける光-スピン変換由来スピン流のスピン拡散長は1桁長いことが明らかとなった。これは光励起キャリアとフェルミレベル近傍のキャリアのスピン輸送特性の違いを反映しており、Biの半金属的な性質が関与していると考えられる。光-スピン変換に関する原理の知見が得られた。さらに、年度の後半には光渦の実験を開始しており、進捗は概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
現状、光渦と電子スピンの関係はほとんど明らかになっていない。しかし、電子スピンを制御する新たな自由度として大きな可能性を秘めている。令和4年度の後半にはレーザー励起テラヘルツ波放射測定において、光渦を用いた光-スピン変換現象の探索をすでに開始しており、それらを継続していく予定である。具体的には、レーザー入射角度や光の軌道角運動量(光渦)の値、材料等の依存性を測定、さらには理論とも照らし合わすことで、様々な観点から光渦-スピン変換の探索やその物理原理の解明を目指す。得られた研究成果は国際学会にて発表、査読付論文を投稿する予定である。
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