2023 Fiscal Year Research-status Report
大気光化学モデルを用いた火星大気進化シナリオの解明と生命関連分子の生成量推定
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22KJ0314
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小山 俊吾 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 火星 / 有機物 / ホルムアルデヒド / 炭素同位体 / 生命 / 大気進化 / 光化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず昨年度から進めてきた初期火星におけるホルムアルデヒドの生成量推定についてまとめ、国際学術誌Scientific Reports(Koyama+2024)に発表した。その後、この研究をさらに発展させ、生成されたホルムアルデヒド中の炭素同位体比を調べた。これまで開発してきた初期火星の1次元大気光学モデルに炭素同位体である13Cを追加し、二酸化炭素が紫外線によって光解離する際に起こる同位体分別効果も導入した。また、これまで大気の温度を固定していたものを大気の進化と共に温度も更新しながら火星の大気進化を計算できるように改良した。この改良によって、従来の研究では不明瞭であった初期火星における二酸化炭素と一酸化炭素の大気進化について、より詳細な描像を明らかにすることが可能となった。本モデルを用いて、約30-40億年前の火星大気進化過程におけるホルムアルデヒド中の炭素同位体比の変遷を推定した。結果として、大気中で生成されたホルムアルデヒドの炭素同位体比は進化の過程で幅広い値を取り、温暖な気候では重い炭素(13C)に枯渇した値を取ることを明らかにした。この結果はNASAの火星探査機キュリオシティーが観測した炭素同位体比の値と照らし合わせると、大気中で生成されたホルムアルデヒドが火星地表面で見つかっている有機物の起源である可能性を示唆している。本成果は、広島で開催された日本惑星科学会秋季講演会で発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、初期火星における炭素同位体比の進化を計算し、それをこれまでの火星探査のデータと照らし合わせて、火星表面に存在する有機物の起源について重要な示唆を与えることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の2点を推進していく予定である。 1)本モデルとGCMを組み合わせることで全球におけるホルムアルデヒドの生成量を見積もり、生命関連分子の濃集する可能性の高い場所を推定する。 2)酸化剤の供給については、計画していた窒素酸化物ではなく、塩素を含む酸化物に焦点を当てて研究を進める。そのために、まず火星における塩素循環を明らかにすることを目標に塩素を含む光化学モデルの開発を進める。
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Causes of Carryover |
来年度の旅費が計画よりも必要であると判断したため。
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