2022 Fiscal Year Annual Research Report
脆性ー塑性遷移領域の地殻強度解明への挑戦~変形実験・複数鉱物からのアプローチ~
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22J22839
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横山 裕晃 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 地殻強度 / 脆性-塑性遷移領域 / 変形実験 / 方解石 / 石英 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では石英と方解石を用いる研究であるが、2022年度は方解石を用いた研究を行った。 東北地方阿武隈山地東縁に産する石灰岩マイロナイト試料を用いた。石灰岩マイロナイトは、変形微細組織の観察により変形双晶の後に動的再結晶していることが明らかになった。変形時の差応力は、変形双晶形成時は、250-300MPa程度であり、その後動的再結晶時には応力は25-45MPa程度で変形したことが推定された。また、石灰岩に含まれる炭質物のラマン分光分析を行った。それにより、動的再結晶時には250-340度程度の温度を被ったことが明らかになった。さらに、推定された温度と差応力を基に動的再結晶を起こした変形時の歪速度を計算すると、10^(-14)-10^(-12) /sで変形していたことが推定された。すなわち、石灰岩は白亜紀花崗岩類の貫入に伴う温度上昇によって動的再結晶が起きたことで、双晶変形時の高応力状態から強度が低下したと考えられる。これらの成果は、現在国際学術雑誌へ投稿する論文として執筆中である。 また、方解石の変形双晶と変形時の差応力について文献調査を行った。方解石の変形実験と双晶密度の解析を行ったこれまでの研究の文献調査を行い、改めて実験条件と双晶密度のデータをまとめた。その結果、変形時の差応力が大きいほど双晶密度が大きくなるという従来の知見に加えて、実験時の圧力(封圧)にも依存する可能性を示した。その原理と要因については、2023年度以降に引き続き調査を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画段階では本年度は石英の研究を予定していたが、予定を変更して方解石の研究を行った。理由は、石英の変形実験をする前の準備に時間を要したことと、方解石の研究に必要な試料がすでにサンプリング済みですぐに研究に着手できる状態であったためである。方解石の研究では、方解石マイロナイトの微細組織の解析と、方解石マイロナイトに含まれる炭質物のラマン分光分析により、変形時の応力や歪速度を制約することができた。これは、地殻強度を推定する上で一つの鍵となる結果である。さらに、方解石の双晶密度と応力の関係に対して圧力(封圧)が依存する可能性があることをまとめた。今後はその要因について解釈を深めていく必要がある。一方で、方解石の双晶密度の関係の文献調査でやや時間を要したことと、本年度は石英の変形実験に着手できなかったことを考えると、本課題の達成度としてはやや遅れていると考える。2023年度以降、引き続き方解石の研究を進め、さらに石英の研究にも着手する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、方解石の双晶密度応力計を構築する。2022年度には、方解石の双晶密度と応力の関係について先行研究の実験条件と結果をまとめ 、双晶密度と応力の関係が圧力(封圧)へ依存する可能性が確認された。この要因となるメカニズムを明らかにするために、構造地質学分野と材料工学分野の文献調査を進める予定である。 また2023年度には、動的再結晶した方解石の粒径応力計の改良を行う予定である。これは、ユトレヒト大学のHans de Bresser教授との共同研究を予定している。Hans de Bresser教授が過去に行った実験試料をEBSDを行い、動的再結晶粒子と残存粒子の識別する。測定した粒径と含水量を考慮し、従来の方解石の粒径応力計を改定する。2023年の冬頃から約6ヶ月間ユトレヒトに滞在し、研究を進める予定である。 石英を用いた方法では高温・高圧での変形実験は2024年度の実施を予定している。低温型石英(α-石英)が安定な領域(封圧~ 2 GPa/温度600 -1000 °C、地殻の脆性―塑性遷移領域下部を想定)での石英の変形実験を行い、実験後の物理データの解析および微細組織解析により、変形 時の応力・歪速度を推定する手法の確立を目指す。 研究結果は随時国内外の学会で発表予定である。現在の予定では、研究結果を日本地質学会(2023年9月開催予定)と国際学会EGU(ヨーロッパ地 球科学連合, 2024年4月開催予定)に投稿を予定している。
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