2023 Fiscal Year Research-status Report
脆性ー塑性遷移領域の地殻強度解明への挑戦~変形実験・複数鉱物からのアプローチ~
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22KJ0318
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横山 裕晃 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 地殻強度 / 方解石 / 変形双晶 / 差応力 / 面転位理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は研究課題の計画を進めるために、方解石の変形双晶が岩石の強度に与える影響について理論的研究をおこなった。方解石の変形実験により、変形時の差応力が増加すると方解石の変形双晶の密度(粒径に対する変形双晶の本数)が増加することは分かっていたが、その理論は十分に研究されてこなかった。そこで、マルテンサイト境界で用いられている面転位理論を変形双晶境界に適用すると、双晶面に存在する面転位は通常の転位とみなすことができる。これにより面転位密度は通常の転位密度と捉えることができ、双晶密度は転位密度と等価であるといえる。したがって、差応力は双晶密度の平方根に比例することが理論的に示すことができた。これは、実験から得られている結果と調和的であり、双晶密度と差応力の関係の物理的背景を説明できることを示唆している。この成果は、2024年7月開催の国際学会DRT(Deformation mechanisms, Rheology and Tectonics)に投稿した。 上記の結果を用いると、変形双晶がみられる天然の岩石(すなわち、過去に変形を被ったもの)の変形双晶密度の測定によって、変形時の差応力推定をより制約することができる。そこで野外地質調査を行い、南部北上帯に属する石灰岩試料(方解石により構成)を採取した。採取した試料中の方解石粒子中には変形双晶が観察され、過去に変形を受けていることが明らかになった。したがって、採取した石灰岩試料の微細組織の観察及び結晶方位の分析により、採取した石灰岩が過去にどの程度の差応力下で変形したか(地殻強度がどれくらいか)を推定する手掛かりとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は方解石の変形双晶密度と差応力の関係について理論的に示すことができた。これにより、変形した石灰岩から変形当時の差応力を推定することがより制約することができる。さらに変形石灰岩の天然試料も採取できたため、今後は変形石灰岩の変形組織の解析により、変形時の差応力推定にすぐ着手できる状態である。したがって、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度に採取した変形石灰岩試料の微細組織観察および結晶方位解析を行う予定である。2023年度に示した方解石双晶密度と差応力の関係を用いて変形当時の差応力を推定し、地殻強度を明らかにする。 さらに、2024年度は石英を用いた方法では高温・高圧での変形実験の実施を予定している。低温型石英(α-石英)が安定な領域(封圧~ 2 GPa/温度600 -1000 °C、地殻の脆性―塑性遷移領域下部を想定)での石英の変形実験を行い、実験後の物理データの解析および微細組織解析により、変形 時の応力・歪速度を推定する手法の確立を目指す。 得られた成果は、日本地質学会(2024年9月開催予定)や、国際学会EGU(ヨーロッパ地 球科学連合, 2025年4月開催予定)に投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
2024年度に、国際学会DRTに参加を予定であり、最近の円安状況を考慮したところ旅費に関わる費用を2023年度は大きく控えたことが、次年度使用額が出た要因の一つである。さらに、論文投稿費用として予算を予定していたが、2023年度は国際学術雑誌へ掲載はなかった。これら2つの理由が主たる理由である。この次年度使用額は、国際学会への参加や2024年度に国際学術雑誌へ投稿する際に使用予定である。
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