2022 Fiscal Year Annual Research Report
筋筋膜経線の視座から切り拓く四脚ロボットの超効率的全身自由度協調運動の実現
Project/Area Number |
22J22959
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
服部 祥英 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
Keywords | 四脚ロボット / 筋筋膜経線 / 脚-体幹連動機構 / 柔軟性 / 大自由度 / 歩容 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,四脚ロボットの移動の効率化及び高速化を実現するため,体幹部の機構系に関する新たなメカニズムの提案及び提案メカニズムを搭載した四脚ロボットの開発を実施した. 年度前半には,四脚ロボットのtrot,gallop歩容等,複数の歩容に対し体幹のリーチを活かした移動の高速化が可能な脚-体幹連動機構の提案及び提案機構を搭載した四脚ロボットの開発を行った.また,開発した四脚ロボットの歩行実験を行い,trot及びgallop歩容という同期脚が異なる複数の歩容における歩幅の拡大を定性的に確認した.この成果をまとめ,第40回日本ロボット学会学術講演会にて口頭発表を行った.これにより,日本ロボット学会第4回優秀研究・技術賞を受賞した. 従来より,体幹を脚と連動させ,体幹へのアクチュエータの追加無しに体幹を能動駆動する脚-体幹連動機構は提案されてきた.しかしながら,従来の連動機構の自由度は,ピッチ軸に限られており,体幹のリーチが活かせる歩容はgallop歩容等,左右脚が同期する一部の歩容に限定されてしまう.提案機構は,筋筋膜経線という解剖学的知見に基づき,体幹の屈曲方向をピッチ軸とヨー軸双方の自由度の連動を可能にした.これにより,gallop歩容だけでなく,対角脚が同期するtrot歩容においても体幹のリーチが活かすことが可能な,初の脚-体幹連動機構を実現した. 年度後半には,gallop歩容という特定の歩容における体幹の最適な構造及び動作の追求のための新たな仮説の提案及び仮説検証のための実機を試作した.従来,四脚動物のgallop走行中の体幹の屈曲形状は単純にC字形状に屈曲-伸展を行うと解釈されてきた.これに対し本研究では,屈曲-伸展の間に,背骨がS字形状を経ることが高速走行に重要であるという仮説を提案し,試作した実機の動作検証を行った.その成果を次年度の国際学会にて発表する予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一の理由として,当初の予定通り,筋筋膜経線という解剖学的知見を四脚ロボットの構造に反映することにより,大自由度四脚ロボットの協調運動を実現する方法を提案し,その有効性を示すことができた点が挙げられる.従来,動物の筋骨格構造に着想を得た機構系の提案は数多くなされてきたが,その多くは身体の局所的な構造のみに注目したものであった.本研究では,筋筋膜経線は,脚と体幹という異なる身体部位間に渡って存在する大域的な構造に着目し,動物にみられるような脚-体幹協調運動パターンを再現した.つまり,従来着目されてこなかった解剖学的知見に基づく新たな機構系を提案し,より適応性の高い脚-体幹連動機構系を実現することで,その有効性を示すことができた点が,評価の第一の理由である.一方で,本機構系の提案は解剖学的側面からヒントを得たものであり,生理学的側面に基づく機構-制御系の提案は,今後の課題である. 第二の理由として,年度後半の研究の進展として,四脚動物の高速走行の実現メカニズムに関して,当初想定していなかった新たな発見があったことが挙げられる.研究開始時点では,動物の解剖学的知見のうち,主に筋肉や筋膜といった筋組織のみに注目していた.ところが,動物の走行中の運動を観察する中で,体幹部の筋組織と柔軟な背骨のカップリングこそが,四脚動物のgallop走行時の高い走行速度に貢献しているのではないか,という仮説に至った.仮説に基づき試作したプロトタイプ実機の検証により,仮説の有効性を支持する結果が得られつつある.つまり,提案するモデルが,筋組織だけでなく背骨の柔軟性も取り入れた,よりダイナミックなモデルへ発展した点が,評価の第二の理由である.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,四脚動物のgallop走行に比肩しうる速度及び効率で走行するロボット実現に向けた機構-制御系の開発を進める.当初から着目していた筋筋膜経線だけでなく,柔軟な背骨の大変形を考慮した,研究開始時点よりもダイナミックな機構-制御系モデルを構築する予定である.具体的には,現在仮説検証中の体幹部のメカニズムに,前後脚の自由度を組み込み,これらの協調制御則を構築することで,矢状面上のgallop走行動作を実現し,四脚ロボットのフルード数および移動効率の飛躍的向上を目指す. 体幹及び前後脚に存在する多数の自由度間の効率的な協調運動を実現するためには,主に2つの課題が存在すると考えられる.第1に,多数の自由度を協調するための,各自由度間の活動タイミングの制御メカニズムの構築である.第2に,体幹の力を効率よく脚先に伝える機構系の構築である.筋筋膜経線を始めとする動物の解剖学的知見及び生理学的知見に基づいた機構-制御系を構築することでこれらの課題の解決を目指す. 以上の研究によって得られた成果をまとめ,ジャーナルへの投稿及び国内外での学会での発表を行う.
|