2022 Fiscal Year Annual Research Report
まち歩きを対象としたデータ駆動型地域づくりのためのGPS軌跡分節化手法の研究
Project/Area Number |
22J23631
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
佐々木 一織 秋田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
Keywords | 地域観光 / まち歩き / モバイルビッグデータ / ホットスポット分析 / ホットストリート分析 / 分節化軌跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,国内外多くの地域では,まちに点在する既存の店や文化財,自然などを特定のテーマでパッケージすることで観光価値を地域に付加する「まち歩き観光事業」が注目されている。本研究は,持続的な地方観光づくりの支援を目的として,モバイルセンサを活用した低コストかつ効果的な観光者フィードバック方法を構築し実証をめざしている。 初年度の研究では,主に次の2つの事柄に取り組み達成した。まず,これまで秋田市との共同プロジェクトとして開発してきたまち歩きガイドアプリをベースとして,ユーザモバイルデータの収集機構とそれらを安全に集約するための管理システムを構築した。現在,モバイルアプリについては,一般公開およびプレスリリースが完了した。したがって,今後,一般観光者の行動データに基づいて本研究の実行性を検証するための基盤を整えることができたといえる。また,当初の計画通り,本年度は「まち歩き観光者にとって興味度合いの高いスポットとウォーキングパスの抽出」をデータマイニングの課題として設定している。本年度を通して,モバイルデータの統合によってより高精度かつコンパクト化された行動ログ(分節化軌跡)を再構築するモジュールとそれに適合するようなヒートマップ生成システムをひとつの枠組みとして実現した。さらに,単独まち歩き観光者を想定して収集した実際のデータを用いて本枠組みを検証し,従来よりも低い実装コストによって課題を達成できることを示した。この成果はすでに国際会議にて複数回発表しており,次年度に研究論文として仕上げる予定である。次年度も同様に,まち歩きを対象としたデータ駆動型デジタル地域観光の支援へ更なる貢献を果たしていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における初年度の研究計画では,モバイルデータから抽出したユーザ行動をもとに高級な軌跡データを再生成するアルゴリズムの指針として議論してきた「分節化軌跡」を観光分野における人流分析の側面から検証することであった。この時,データマイニング課題として「まち歩き観光者にとって興味度の高いスポットとウォーキングパスの抽出」を設定していた。 次の理由から,初年度は「おおむね順調に進展している」という結論に至る。第一に,実際のまち歩き観光者データを用いて,従来のGPS軌跡データが課題の達成を困難にしている原因を整理した。ホットスポット分析においては,軌跡データのクラスタ箇所が観光者の内的な動機だけでなく道路環境や交通状況,センサノイズなどの観光者理解に不必要な発生要因を排除しきれないことを問題とした。また,ホットストリート分析においては,離散的かつ低精度なGPS軌跡データから道路セグメントを表すクラスタを抽出することの困難さを問題とした。第二に,従来の解決策では事前に定義された地物モデルの必要性に頼っていた側面があるが,本研究が議論する分節化軌跡では,モデルレスなアプローチによって実装コストの面から優位性の持つ選択肢を提示する可能性を示した。特にGPS軌跡は,観光者の屋内滞在など特定のシチュエーションにおいて著しく不正確な情報を反映することがある。本研究の提案のようにユーザの観光体験コンテクストに基づいて選択的に軌跡データを高級化するアプローチは,データの不正確性や曖昧性を適切に低減することができ,観光事業者が観光者行動を正しく捉える上で有効なサマリーを出力する可能性を実データを用いて実証することができた。以上,初年度の研究計画に対して,十分な議論と実験に基づく検証を生み出すことができていると評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では,「まち歩きを対象とした持続的な地方観光づくりの支援」という目的に照らして,常によりよい推進方策を模索しながらも,おおよそ当初の計画通りに研究課題を遂行する予定である。 具体的には,以下の3つを次年度以降の方策とする。(1)分節化軌跡に基づくデータマイニングの課題についてさらなる議論を進めながら,もう一つの重要な課題として「デジタルまち歩き観光ガイドサービスの自動最適化(特にGeofencing最適化問題)」の定式化と検証に取り組む。(2)成果をまち歩き観光GISとして統合し,分節化手法とまち歩き事業の親和性と地域づくりにおける有用性および課題を地域観光組織とともに確認したり調査を実施する中で明らかにする。(3)分節化軌跡の実現可能性や将来性を確かにするため,従来の経緯度データにとどまらないビッグデータの収集可能性をユーザの観点から検証し,健全なデータ活用社会の構築に寄与する。
|
Research Products
(4 results)