2023 Fiscal Year Research-status Report
まち歩きを対象としたデータ駆動型地域づくりのためのGPS軌跡分節化手法の研究
Project/Area Number |
22KJ0325
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
佐々木 一織 秋田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 地域観光 / 位置情報サービス / ジオフェンシング / データマイニング / 自動チューニング / 歩行者分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,持続的な地方観光づくりを目的として「まち歩き観光事業」のデジタル支援をテーマとする。モバイルアプリを通じて観光者データを収集し,データ駆動による観光サービス改善手法の開発と実証を探求するものである。 昨年度,第1のデータマイニング課題「域内に存在するホットスポット・ストリートのモデルレス可視化手法」の開発が完了していた。これは,観光者の複数のモバイルセンサデータを協調させ,調査地域内における観光者アクセスの多いスポットや道路の存在を効果的かつ低コストでヒートマッピングする方法論である。本年度は,この研究成果を研究論文にまとめ,国際論文誌に採録された。 また,第2のデータマイニング課題として「ジオフェンシング(仮想的な境界線の進入に対して自動的に情報をプッシュする技術)における仮想境界の自動チューニング手法の開発」に取り組んだ。ジオフェンシングはまち歩き観光における位置情報サービスで中心的な役割を果たしており,そのチューニング手法について有効な解決策が確立していないため,本研究課題を構成する重要なトピックと考える。本年度は,ジオフェンシング設計における問題をユーザ調査や文献調査から定式化し,過去の観光者の移動データに基づく最適化問題に落とし込み解決手法の構築につながった。異なるモビリティパターンを想定したシミュレーション実験とサービス設計者を想定したユーザ実験によって,本手法の有効性が示された。これらの成果はすでに複数の国際会議で発表しており,研究論文にまとめ,国際論文誌に投稿し現在審査中である。 他に,これまでの研究成果をもとに,位置情報サービス学習のためのモバイルアプリを開発した。これを用いたアウトリーチを,申請者が所属する大学の実習授業や高校生向けのオープンラボなどで積極的に実践し,STEAM教育にもつながる新しく有望な教育コンテンツの可能性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画として,「ジオフェンシング(仮想的な境界線の進入に対して自動的に情報をプッシュする技術)における仮想境界の自動チューニング手法の開発」を設定し取り組んだ。ジオフェンシングは,まちの探索を伴うまち歩き観光に際してヒトの移動を支援する位置情報サービスに広く応用されている重要な技術である。 次の理由から,本年度は「おおむね順調に進展している」という結論に至る。まず,文献調査およびユーザ実験を通してジオフェンシングのデザインにおける問題点を整理できた。これまでサービス開発者によって恣意的に設定された仮想境界は,センサノイズなど技術的制約を十分に考慮することが困難であった。また,現在地から離れすぎている情報の発出や歩行者が通行できない領域をカバーしてしまうなどユーザビリティの低下にもつながる問題も生じた。本研究では,これを情報関連度とユーザカバー率の問題として定式化した。これらは,本研究課題における分析課題を定義するための基礎を構築することにつながった。次に,この問題定義を観光者のGPS軌跡データを利用した最適化手法によって計算機で解決する可能性を示した。このデータ駆動型の解決策は,研究課題の動機にちょうど合致するものである。以上の理由より,本年度は,当該研究課題を構成する「デジタル観光に寄与するデータ駆動型のソリューション」について優れた研究成果を創出することができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では,本年度に明らかになったジオフェンシングのデザイン問題の重要性を考慮し,推進方策を一部調整する。具体的には,ジオフェンシングのパラメータ自動チューニングについて,多様なサービスの目的に適した手法の細分化を試みる。これにより,本年度の成果をデジタル地域観光の一環として位置づけ,本研究課題全体を深化させる。また,位置情報サービス開発における「GPS軌跡分節化手法」の貢献も明らかにする。 他の方針は,基本的に当初の研究計画に従う。本年度は,市民イベントを通じて研究成果を一般に伝える機会を設け,これを通じて具体的な社会的有用性と今後の方針を議論する。この成果は,モバイルアプリケーションに導入し,実証実験を行う。最後に,採用期間を通じて得られた成果をまち歩き事業のライフサイクルに統合し,データ駆動型デジタル地域観光支援への実用的な貢献としてまとめる。
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Causes of Carryover |
当該年度における研究成果をまとめて,オープンアクセスの国際論文誌に掲載するための経費として計画していた。しかし,当該年度中に論文誌の掲載が確定しなかったため,次年度の支出として未使用額が発生した。
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Research Products
(7 results)