2022 Fiscal Year Annual Research Report
結晶格子の歪みを制御したペロブスカイト量子ドットの晶析条件とフロー合成法の確立
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22J10338
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
佐藤 亮太 山形大学, 理工学研究科(理・工), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | ペロブスカイト量子ドット / Aサイト / 格子歪み / バンドギャップ / 発光波長 / 発光量子収率 |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代LED光源として有望なAPbX3型ペロブスカイト量子ドット(PeQDs)の発光特性の最大化を目的とした。具体的には、Aサイトを複数の元素で構成したAサイト混合型PeQDs(AxA'1-xPbX3型PeQDs)により、そのバンド構造を精緻に制御し、これまで未踏であった「精緻な発光波長制御」と「発光量子収率(PLQY)の最大化」を達成した。 AxA'1-xPbX3型PeQDsの作製には、簡便な環境下で目的物を晶析できるバッチ式の配位子支援再沈殿法を採用した。ここでは、AおよびA'サイトとして、イオン半径差の小さい「ホルムアミジニウム(FA):2.56Å」と「メチルアンモニウム(MA):2.13Å」を選定し、そのモル比率(FA:MA)を制御したFAxMA'1-xPbBr3を作製した。また、本研究では、色安定性の高い緑色発光を示すBrをXサイトとして使用した。 構造解析の結果から、FAxMA'1-xPbBr3のA:A'のモル比率を制御することで、結晶に格子歪みが生じていることを明らかにした。また、光学特性評価の結果から、バンドギャップの微増加とそれに伴う発光波長の青色偏移を確認し、特に、その発光波長を1 nmオーダーで精緻に制御できることを明らかにした。以上より、イオン半径の近いAサイト2種を用いるだけで、結晶の格子歪みを誘発し、発光波長を精緻に制御できることを立証した。次に、蛍光寿命とPLQYを測定したところ、結晶の格子歪みが生じているにも関わらず、Aサイトの導入前後で寿命成分およびPLQYに変化が見られなかった。これは、AサイトがPeQDsの発光特性を決定しているサイトではないことから、PLQY低下の原因であるトラップ準位がバンド構造内に形成されなかったためである。結果として、全ての系において、分散液状態で90%、薄膜状態で80%を超える高いPLQYを達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、イオン半径の異なるAサイト2種を用いるだけで、結晶の格子歪みを誘発し、「1 nmオーダーの発光波長制御」と「高いPLQY(分散液状態:90%、薄膜状態:80%)」を達成した。特に、本手法では、使用するAサイト2種のイオン半径差を変えるだけで、発光波長の制御域を変えることができる点を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に達成したバッチ式の晶析条件を研究室独自の連続フロー式である「強制薄膜式マイクロリアクター法」に展開する。ここでは、バッチ式と同等以上の光学特性を有するFAxMA'1-xPbBr3の連続フロー式の晶析条件を確立する。その後、バッチ式と連続フロー式で作製したFAxMA'1-xPbBr3を用いて、薄膜を作製し、プロトタイプのLEDデバイスの構築と素子性能評価を実施する。ここでは、FAxMA'1-xPbBr3のAサイト2種の比率毎にLEDデバイスを構築し、発光波長を1 nm オーダーで制御した高性能オーダーメイド型緑色発光PeQDs-LED デバイスを作製する予定である。
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