2022 Fiscal Year Annual Research Report
量子ナノセンサーと超解像技術を融合した暗黒物質の方向探索実験
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21J00565
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
梅本 篤宏 筑波大学, 数理物質系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / ダイヤモンド / NV center / 粒子検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイヤモンドNV centerの蛍光飛跡検出法と量子センシングによる超解像飛跡検出による暗黒物質方向探索を実現するための基礎研究開発を進めた。蛍光飛跡検出は、窒素不純物を含むダイヤモンドに入射した重粒子が核的な相互作用で多量の原子空孔を形成し、直近の窒素原子との結合で飛跡に沿って形成されたNV centerを読み取って行う。昨年度より継続しているNV centerの並びを読み取るための共焦点顕微鏡の開発を進め、新たにMPPCとユニバーサルカウンターを組み合わせた光検出器を構築し、NV center の発光測定を実証した。マイクロ波発生装置を導入してNV centerのスピン操作を可能とし、Φ= 5μmのピンホールを用いた測定で、CVDダイヤモンド中のNV center のODMRスペクトルを検出した。 量研高崎のイオンビーム(TIARA)を用いて、HPHTとCVDで合成された窒素不純物量の異なる幾つかのダイヤモンド基板にE = 454 MeV のキセノンと E = 220 MeVのカーボンを照射した。今後、開発中の顕微鏡を用いて飛跡の検出能力を定量化する。 暗黒物質探索での粒子検出の多角化を目的とした、ダイヤモンドシンチレータの開発も並行して行った。HPHTダイヤモンドに関して、窒素不純物量と発光量の関係性を明らかにし、窒素不純物量 ~ 200 ppm での発光量が 5.5E+04 ph/MeV であることを示した。また、発光波形を用いた電子とα線の識別に関する評価を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度はダイヤモンドNV center を用いた飛跡検出のための共焦点顕微鏡開発と、ダイヤモンドシンチレータの開発の両方で一定の成果を得た。 共焦点顕微鏡は実際にデータ取得が可能な状態まで開発を進め、ステージ駆動のためのピエゾ素子、NV centerの蛍光を検出するためのMPPC、電子スピンを操作するためのマイクロ波発生器、それぞれの制御を可能とするシステムを構築し、集団的(アンサンブル)なNV center のスピン状態の読み出しを実証した。 ダイヤモンドシンチータは東北大金研・UVSORの共同研究として評価を進め、HPHT法で合成されたダイヤモンドを用い、窒素不純物量と発光量、発光の減衰時間の相関を明らかにした。また極紫外励起による蛍光の温度依存性を評価し、低温にすることで検出光量が増大し、T~30 Kで室温の100倍以上の検出光量を確認した。 上記の通り、解析システムの構築とダイヤモンド検出器の理解は進んでおり、研究は順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
共焦点顕微鏡とダイヤモンドシンチレータの開発を継続して進める。また、2022年度に照射したキセノンと炭素イオンの飛跡をNV center による蛍光飛跡検出で読み取り、暗黒物質の方向探索に向けた検出器能力の定量化を進める。
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Research Products
(5 results)