2021 Fiscal Year Annual Research Report
情報科学における確率的組合せ論及び極値集合論を通した離散構造の考究
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21J00593
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
角田 有 筑波大学, システム情報系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 情報理論 / 符号理論 / 確率的組合せ論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、離散数学の一分野である確率的組合せ論を、情報科学における符号理論分野において活躍させ、効率的な構成法やより精度の高い理論限界の導出をすることを目指している。 本研究課題1年目である本年度は、まず、予備研究段階において既に確率的組合せ論の有効性が確認されている周波数ホッピング系列と呼ばれる無線通信の同期のための離散構造に焦点を当てた。 周波数ホッピング系列に関する符号理論的研究は、代数学が特に有効であるような限られた状況のみ考察する研究が盛んに進められている一方で、最も要素系列数の多いものは一般にどのような大きさなのか、つまり、最大符号語数はどれほどなのかという基本的かつ重要な問いに対しては未知の領域が多く、最新の極値集合論の応用を試みる研究といえば、例えば Niu ら(2020)などの散発的な研究に止まっている。 本年度の研究においては、確率集中不等式を応用することで Niu らの導出した周波数ホッピング系列の最大符号語数に関する限界式を改良することができたが、論文にまとめられる一定の結果はまだ得られていない。その一方で期せずして、誤り訂正符号の一種であるLDPC符号のシンドロームを使った誤り確率の最尤推定に関する問題や、weak superimposed code というディジタル指紋などに応用される離散構造について、周波数ホッピング系列の研究で得られた知見を元に新たな結果を得ることができた。誤り確率の最尤推定に関する結果は、現在実験的に知られている最尤推定の推定値の正しさを解析的にある意味で保証することができたというものである。 この結果については、現在論文にまとめている段階である。一方、weak superimposed code については、既知の最大符号語数の限界式を改良し、その効率的な構成アルゴリズムを導出することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の研究実績の概要に記載したように、当初計画していた研究実施計画通りではないものの、確率的組合せ論を用いて weak superimposed code などの組合せ構造において研究成果が得られている。この weak superimposed code に関する限界式の導出の際、当初予期していなかった問題がありその問題解決に時間を費やしたが、この問題解決を通して今後の研究につながる新しい知見を得ることができたため、本研究は概ね順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で、確率集中不等式を用いた確率的手法によって、weak superimposed code に関する限界式が改良でき、また効率的な構成アルゴリズムを導出した。今後の研究では、この研究成果を他の類似の組合せ構造に還元する。具体的には、グループテストに用いられる disjunct 行列やその類似の構造の調査から着手することを計画している。
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Research Products
(2 results)