2021 Fiscal Year Annual Research Report
液-液相分離による液滴と外部物質の相互作用に基づいた炭酸同化酵素の活性化
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21J00852
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
延山 知弘 筑波大学, 数理物質系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 液液相分離 / 脂質ラフト / ナノバタフライ / 金ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は実験系・計算系の構築に集中し、次年度以降の研究体制を整えることに成功した。 実験系に関してであるが、ナノ粒子側と脂質膜側の2方面で進捗が見られた。ナノ粒子側に関しては中程度の対称性を持つ蝶々型ナノ粒子(Gold nano-butterfly, GNB)の安定的な合成に成功し、添加剤効果を用いてその形成メカニズムの解明に成功した。このメカニズムに基づきGNBの形状を制御する手法を探索し、これまでに大きさの縮小や羽根型部位の角度変化等を行うことに成功している。また、GNBが液滴の成熟過程に干渉し、液滴内へと内包されることを明らかにした。モデル液滴系であるATP-ポリリジン系に対してGNBを分散させたところ、本来成熟した液滴が形成されない条件下で液滴が形成された。対照的に、球状ナノ粒子は凝集し液滴とはならなかった。 脂質膜側に対しては、モデル脂質膜(GUV)を用いて、脂質膜の相分離状態を詳しく調べるタイムラプス計測系・解析系を、確立することが出来た。Lo/Ld相分離GUV(Lo相:液体秩序相。Ld相:液体無秩序相)のモデル脂質ラフト領域(Lo相)からコレステロールを奪うナノデバイスをLo相側に吸着させてしばらく待つと、滑らかな曲線である相ドメイン境界が崩れ、各ドメインから微小ドメインが各相に放出された。しばらくたつとドメイン同士が貫入し、液-液相分離が固-液相分離へと変化した。同様の現象は液滴-脂質膜接触面でも見られると考えられ、接触面固有の変化を観測できる技術を確立したと言える。 計算面では自ら他の外部資金をも獲得しつつ自作計算機を作製し・密度汎関数法を始めとする種々の計算技術を習得した。液滴内で蛍光スペクトルが変化する蛍光色素に対して量子化学計算による解析を行い、周囲の化学結合の種類とスペクトル変化との間の関連性を理論的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた実験系に加え、計算機を自作するなど自由に使える計算系を構築出来た。また、走査型および透過型電子顕微鏡・原子間力顕微鏡・各種スペクトル測定・添加剤の使い方などの実験手法に慣れた。3大学の共同研究体制を確立し来年度以降の研究体制を整えた。特別研究員奨励費に加え、科研費を始めとする計4つの外部資金を研究代表者として獲得した。また論文草稿を4報分執筆しており、来年度はこれらを順次投稿・出版可能と思われる。計画を着実に遂行できる目途が立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に構築した実験系・計算系を元に研究を進める。脂質-液滴相互作用に関しては本年度確立した実験系を用いて解析を進め、各相の脂質膜上でどのように液滴がふるまうか、また脂質膜がどのように変わるかを明らかにする。液滴-ナノ粒子相互作用に関しては、種々のGNBを主軸として金ナノ粒子-液滴相互作用を網羅的に比較検討する。その上で、酵素をナノ粒子内に内包し金ナノ粒子にレーザーを照射・酵素の光活性化を試みる。また確立した計算系・実験系を元に液滴内の状態を蛍光色素で測定可能となる系を確立し、液滴内状態のリアルタイム計測による液滴性の再定義を目指す。計算と実験の知見を元に、液滴の状態を確実に把握する系を立ち上げ、炭酸同化酵素の活性化を行う上での最適反応場を迅速に確立できるようにする。主にレーザーをはじめとする実験設備を構築すると共に、引き続き必要な理論計算に習熟し、計算資源の強化を行いつつ研究計画を遂行する。
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Research Products
(1 results)