2021 Fiscal Year Annual Research Report
エストロゲン受容体αとβを介した攻撃行動表出への異なる調節メカニズムの解明
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21J20176
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
蓮沼 寛介 筑波大学, 人間総合科学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 外側中隔 / エストロゲン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、外側中隔(LS)のエストロゲン受容体(ER)αとERβによる攻撃行動表出への異なる調節メカニズムの解明を目的とした。ERαは直接攻撃行動を促進する一方で、ERβは不安の抑制を介して間接的に攻撃行動を抑制していると予想される。2022年度はERα及びβ陽性細胞の神経投射を細胞種特異的な神経トレーサーの導入により検討した。実験動物には、それぞれERα陽性細胞にcreを発現するERα-creマウスまたはERβ陽性細胞にcreを発現するERβ-creマウスの雄を用いる。まず、10週齢以上のマウスのLSにcre依存的に発現し神経終末を標識するウイルスベクター(hSyn-DIO-syntag-GFP)を導入する。1か月後にマウスを灌流固定して脳組織を採取し、前頭前野(bregma 1.8mm)から背側縫線核(bregma-5.0mm)にかけての薄切冠状切片を作成した。蛍光免疫組織化学により、ウイルスベクターの神経終末における発現を緑色蛍光タンパク質で可視化した。LSのERαまたはERβ陽性細胞の神経投射脳領域を全脳的に探索し、ERα-creマウスとERβ-creマウスで神経投射の差異を検討した。特に、強い神経投射が確認される視床下部前野や視床下部腹内側核などの脳領域において、蛍光強度を測定することで、ERα-creマウスとERβ-creマウスで神経投射の量的な比較を行った。その結果、ERβ-creマウスにおいてのみ、視床下部前野への強い神経投射が確認された。また、視床下部腹内側核において、2種のマウス間で異なる神経投射パターンが発見された。ERα-creマウスにおいては腹外側部に投射が集中していた一方で、ERβ-creマウスでは、背内側部に投射が強くみられた。これらの結果から、LSのERα陽性細胞とERβ陽性細胞は異なる神経投射パターンを持つことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、研究実施計画の実験1と実験2まで終了している。2022年度には、実験3として、ERα及びERβ陽性細胞の神経活動操作による攻撃行動表出への影響の検討を予定していた。しかしながら、本研究で使用するERβ-creマウスにおいて、攻撃行動の安定した表出がみられないことが、検討実験の段階で明らかになった。実験3では、DREADDシステムによるERβ陽性細胞特異的な神経活動操作を攻撃行動実験中に行うことで、攻撃行動表出がどのように変化するかを検討する予定であった。そのため、神経活動操作を行わない段階においてベースラインとなる攻撃行動の表出が必須であった。これらのことから、実験3を行うにあたり、攻撃行動テストの方法の見直しが必要になったため、実験開始が遅れている。しかしながら、実験全体の進捗としてはおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、現在条件検討を行っている実験3の攻撃行動テストを実施する。実験3では、雄マウスのLSにDREADD法による神経活動操作用のウイルスベクターを導入し、ERαまたはERβ陽性細胞の神経活動操作が攻撃行動の表出に与える影響を検討する。実験動物には、ERα-creマウスまたはERβ-creマウスの雄を用いる。まず、10週齢以上のマウスのLSにcre依存的に発現するDREADD法による神経活動操作用のウイルスベクター(hSyn-DIO-hM4Di-mCherryまたはhSyn-DIO-hM3Dq-mCherry)を導入する。回復期の後、15分間の攻撃行動テストを3日間行う。条件検討において、当初予定していた居住者侵入者テストや、ニュートラルアリーナテストなどの複数の行動テストを比較し、攻撃行動の安定した表出がみられる行動テストを採用する。テストのday2に神経活動操作を行い、神経活動操作を行わないday1・day3との間で結果を比較検討する。その後、マウスを灌流固定して脳組織を採取し薄切冠状切片を作成する。蛍光免疫組織化学により、LSにおけるウイルスベクター発現を赤色蛍光タンパク質で可視化し、ウイルスベクターの感染範囲を確認する。これらの検討を10月ごろまでに終了し、その後それらの結果について学術論文にまとめる。
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