2022 Fiscal Year Annual Research Report
気泡流中の非線形波を記述する3圧力2流体モデルの理論創成とソリトン発展の数値実験
Project/Area Number |
21J20389
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Research Fellow |
鮎貝 崇広 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | キャビテーション / 二流体モデル / 気液二相流 / マグマ |
Outline of Annual Research Achievements |
ポンプ等の局所的な圧力低下を伴う流体機械において生じる気泡が崩壊する際、瞬間的に高温高圧が生じ、機械の騒音や損傷(キャビテーション壊食)の原因となることから、キャビテーション壊食をシミュレーションするための高精度な数学モデルの開発が求められている。令和3年度には、気泡崩壊時の高圧を表現可能な数学モデルである「体積平均化3圧力二流体モデル」に対して、新たにエネルギー保存式を導出することで、液相が等温かつ非圧縮である場合における、気泡崩壊時の高温や流れの熱減衰を表現可能な二流体モデルを構築し、その安定性解析を行った。今年度は、数学モデルのさらなる高精度化を目的とし、以下の研究実績を得た。 [1] 液相の圧縮性を考慮した二流体モデルを構築し、安定性解析を行ったところ、数学的適切性(増幅係数が上に有界であること)を満足する一方で、解の安定性は満たされなかった。 [2] エネルギー保存式における界面輸送項をモデル化する構成方程式として、気液温度差の時間変化と界面温度勾配の時間変化の位相差を考慮したSTMモデルを用いた場合の二流体モデルが、最も高い安定性を示した。 以上の成果を、国内学会および国際学会「The 11th International Conference on Multiphase Flow」にて発表した。さらに本年度は、気泡流を表す数学モデルの一般化として、液相が非Newton流体である場合の数学モデルの開発を行った。対象として、高温高圧の極限条件にある発泡マグマを選択し、非線形の応力・ひずみ速度関係で表現される液相の非Newtonレオロジーを線形の関係式で近似する方法である実効粘度を採用した。結果として、気液間相互作用を記述可能な実効二流体モデルと、発泡マグマ全体を一つの混合流体と見なす三相混合体モデルを導出した。以上の成果を、日本火山学会2022年度秋季大会にて発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下を理由に、「2:おおむね順調に進展している」と区分した。 [1] 本年度に行った二流体モデルの拡張は、液相の圧縮性や液温の時空間依存性という現象としての正確性に資する部分であり、数値計算による流動予測の正確性向上に直接つながる。また、それらに伴う安定性の変化は、二流体モデルを数値計算する際のスキームの選定に資する。以上から、本年度の成果は、将来的に行う数値計算の布石として十分な役割を果たしたと言える。 [2] 発泡マグマを表す数学モデルに関して、令和3年度には液相を粘弾性流体とし、非線形の応力・ひずみ速度関係式を直接導入する計画であった。発泡マグマのダイナミックな流動を表現する場合にはこの方法を採用する必要があるが、本研究課題では微小振幅波の伝播という穏やかな流動を対象とするため、問題の簡単化および1次元波動伝播への適用性の高さから、線形の応力・ひずみ速度関係式である実効粘度を採用するに至った。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度に確立した非Newton流体の数学モデルに対して、線形分散関係に基づく理論解析を行うことで、発泡マグマ中を伝播する圧力波(P波)の基本的な伝播特性を明らかにする。さらに、特異摂動法を用いて当該数学モデルから非線形的効果を伴う波動方程式を導出し、数値解析を行うことで、P波波形の時間発展を可視化する。
|