2022 Fiscal Year Annual Research Report
細胞質雄性不稔性トマトの雄性不稔化と稔性回復の分子機構解明
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21J20479
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
桑原 康介 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞質雄性不稔性 / ミトコンドリア / トマト / 花粉 / 稔性回復 |
Outline of Annual Research Achievements |
トマト細胞質雄性不稔(CMS)を引き起こすCMS原因遺伝子として新規のミトコンドリア遺伝子(orf137)を同定することに成功している(Kuwabara et al., 2022 Plant Physiol.)。トマトCMS系統では、花粉は正常に発達できるが、花粉発芽のみに異常が生じるという雄性不稔形質を示す。詳細に不稔形質を調査するために、花粉発芽に重要な因子であるカルシウムイオンの花粉内部における局在性を調査した。その結果、稔性系統の花粉ではカルシウムイオンが1箇所に強く蓄積して、その部分から花粉発芽する様子が観察された。一方で、トマトCMS系統の花粉では、複数箇所にカルシウムイオンが強く蓄積し、複数箇所から発芽するという異常な形質を示すことを明らかにした。また、RNA-Seqを用いた網羅的遺伝子発現解析により、トマトCMS系統の異常形質と関連する核遺伝子の発現変動を複数検出することに成功した。 イネなどの他作物のCMS系統で同定されたCMS原因遺伝子の多くは、ミトコンドリア呼吸鎖複合体の活性を低下させることで雄性不稔を引き起こすことが報告されている。トマトCMS系統で同定したorf137がミトコンドリア呼吸鎖複合体の活性を変化させるかを検証した結果、全く影響を及びさないことを明らかにした。この現象はこれまで報告されておらず、orf137は他作物のCMS原因遺伝子とは異なる機能を持つことが示唆された。 トマトCMS系統の稔性を回復させる稔性回復遺伝子(RF遺伝子)はトマト稔性回復系統(Solanum pimpinellifolium と S. lycopersicum var. cerasiforme)の核ゲノム上に存在する。これまでに9個のRF遺伝子候補を発見していた。しかし、これらの遺伝子候補をトマトCMS系統に遺伝子導入しても、花粉稔性が回復しないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度中にトマト稔性回復系統におけるRF遺伝子を同定する予定であったが、候補遺伝子をトマトCMS系統に導入しても花粉稔性が回復しなかったことから、同定には至らなかった。計画当初はRF遺伝子候補の遺伝子導入により検証が可能であると予想していたが、遺伝子導入ではなく、遺伝子破壊をする必要性が新たに考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
網羅的遺伝子発現解析により検出することに成功したトマトCMS系統の異常形質と関連する核遺伝子について、花粉内部カルシウムイオンの局在性との関連性を調査する。 他作物において、RF遺伝子が壊れることで花粉稔性が回復する例が報告されている。この例を参考にし、9個のRF遺伝子候補を破壊するためのゲノム編集ベクターを作出した。現在、これらのベクターをトマトCMS系統に導入して、RF遺伝子候補を破壊した系統を作出している。
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