2021 Fiscal Year Annual Research Report
Clarification of Energy Mechanisms in Supercritical Accretion Flows on to Neutron Stars through Hydrodynamics and Radiative Transfer Simulations
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21J21040
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
井上 壮大 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 中性子星 / 降着円盤 / 数値シミュレーション / 一般相対論的輻射磁気流体シミュレーション / 輻射輸送 / 輻射輸送計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高光度X線パルサー(ULXパルサー)とは、光度が太陽光度の100万倍を超えるX線パルサーである。磁化した中性子星への超臨界降着流(降着率がエディントン限界降着率を超える降着流)がULXパルサーの正体だと考えられている。しかし、これは単なる仮説に過ぎず、実際に観測されている大光度や、輻射スペクトルをこのモデルが説明可能か否か、未解決のままである。 本年度では、磁化した中性子星周囲の降着流に対して、一般相対論的輻射磁気流体力学計算コード(UWABAMI ; Takahashi & Ohsuga 2017)を用いた流体力学計算を実施した。その結果、超臨界降着円盤が中性子星の強力な双極子磁場によって途切れること、そしてその半径が、理論式から推測される中性星磁場強度依存性および質量降着率依存性とおおよそ一致することが明らかになった。さらに、超臨界降着円盤から輻射圧によって駆動されるアウトフローが発生し、そのアウトフローの温度がULXパルサーにおいて観測されている約一千万度の黒体放射温度と無矛盾であることも突き止めた。この結果は、ULXパルサーが磁化した中性子星への超臨界降着流によって駆動されているという仮説を支持するものである。 また来年度に向けて、UWABAMIを数値計算的に安定になるよう改良した。その結果、従来よりも比較的中性子星磁場強度が高い(100億ガウス以上)モデルの計算が可能になった。テスト計算は既に最終段階に達しており、今後は改良したUWABAMIを用いて、より広いパラメータレンジで数値シミュレーションを実施することが可能になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁化した中性子星周囲の降着流の一般相対論的輻射磁気流体力学計算を実施し、観測データと無矛盾な理論モデルを構築することに成功した。これらの成果は既に複数の国内学会で発表済みである。本年度の下半期は、中性子星磁場強度が大きなモデルの取り扱いに苦戦を強いられた。しかしながらコードの改良は順調で、テスト計算も完了している。従来のコードに比べ、より大きな磁場強度のモデルを安定にかつ短い時間で解けることも確認済みである。以上のように、シミュレーション結果と観測結果の比較およびコード改良が問題なく完了した。以上を踏まえておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
改良したUWABAMIを用いて中性子星の磁場強度および質量降着率を変化させ、アウトフロー温度、自転周期の時間変化率等を計算する。特に自転周期の時間変化率は、観測結果と直接比較することが可能なので、ULXパルサーの中性子星磁場強度に強固な制限を与えることができると期待される。また、円盤が途切れる半径が比較的大きなモデルの場合、質量降着率が準周期的に変動する傾向も見られている。この原因はまだよくわかっていないが、磁気再結合が起源の可能性があるので、この点の解明も行う。大規模計算に必要な計算機は、東京大学が有するスーパーコンピュータ「Wisteria」、国立天文台が有するスーパーコンピュータ「ATERUI II」を使用する。理化学研究所が有するスーパーコンピュータ「富岳」を利用する可能性もある。計算資源は既に確保している。
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