2023 Fiscal Year Annual Research Report
生存に不可欠な睡眠の役割の解明: 遺伝学と非線形光学によるアプローチ
Project/Area Number |
22KJ0369
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮崎 慎一 東京大学, 理学系研究科生物科学専攻, 助教
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Keywords | 睡眠 / 遺伝学 / 順遺伝学的スクリーニング / 神経科学 / 線虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は遺伝学的スクリーニングと非線形光学イメージングという異なる二つの手法を用いて、睡眠の機能に迫ることを目的としている。 遺伝学的な手法による取り組みとして順遺伝学的スクリーニングにより、「眠らないが、長期間生存が可能な変異体」を2系統単離することに成功した。その後、単離した変異体の持っている遺伝子変異について解析を進めてきた。まず、単離した変異体の全ゲノム解析によって、原因遺伝子の候補を絞り込んだ。続いて、これらの候補遺伝子について、ゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9システムを用いて、単離した変異体と同じ遺伝子変異を再現する解析を行ってきた。現時点までに、一部の候補遺伝子については表現型解析まで終えることができた。引き続きCRISPR/Cas9によって遺伝子変異を再現することで原因遺伝子を同定することを目指している。 非線形光学を用いた取り組みでは、ラベルフリーで生体分子をイメージングできるCARS/SHG/THGを用いた線虫のイメージングを行ってきた。野生型と遺伝学的に睡眠が減少している変異体を非線形光学顕微鏡によるイメージングで比較することによって、特定の生体分子の構造変化が、睡眠をとれなかった際に起こっていることが明らかになった。 また研究期間中に並行して行った神経科学的な手法を用いた睡眠の制御機構に関する研究では、カルシウムイメージングによって、線虫の睡眠の恒常性制御を担っていると考えられる神経細胞の同定と機能解析を行った。この研究成果は筆頭著者として国際誌に報告した。 以上のように遺伝学的スクリーニングにより睡眠の機能に関連すると考えられる新規の変異体2系統の単離に成功した。また非線形光学イメージングによって睡眠をとれなかった際に起こる生体分子の構造変化を分光学的な手法で明らかにした。
|