2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J10569
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
梨木 聡人 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | 新規性決定遺伝子 / メロン / 性表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、雑草メロン系統‘UT1’に由来する新規性決定遺伝子(両性花性遺伝子および主枝成性遺伝子)の同定とその遺伝的メカニズムの全容解明に迫るとともに、その新規性決定遺伝子の育種利用における有用性を検証することを目標としている。令和4年度の具体的な研究内容とその成果は次の通りである。 はじめに、‘UT1’の全ゲノム配列情報を取得し、既に解読済みの‘EF’と性決定遺伝子座上領域の塩基配列の比較を行った結果、両者の間に大きな構造変異は見られなかった。 次に、2つの新規性決定遺伝子の育種利用における有用性を評価することを目的に、遺伝的背景が大きく異なる品種群に属する8品種・系統(花粉親)と雑草メロン系統(種子親)の交雑を行い、得られた雑種(F1)の性表現を調査した。その結果、全ての交配組合せで主枝成性を示したことから、‘UT1’に由来する主枝成性遺伝子は広範な品種群において容易に主枝成性を付与できる遺伝子として極めて有用であると考えられた。一方、花粉親として用いた8品種・系統における既報の性決定遺伝子(3遺伝子)の遺伝子型は全て同一であったが、F1の性表現は花粉親系統間で異なった。これは花粉親系統間における第8染色体に座上する両性花性遺伝子のアリルの違いに起因すると考えられた。第8染色体に座上する両性花性遺伝子については他の研究グループにより候補遺伝子が1つに絞られおり、花粉親の当該遺伝子配列を調査した結果、アリルと性表現の関係が一致しなかった。そのため、既報の性決定遺伝子との相互作用の詳細な解明を含む更なる研究が必要であると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、本年度は研究材料の全ゲノム配列情報を取得し、構造変異の有無の確認および次年度に予定している主枝成性に関わる候補遺伝子の同定に向けたファインマッピングのためのDNAマーカーを設計した。また、新規性決定遺伝子の育種利用における有用性について評価し、更なる課題の発見に至った。以上の点から、本課題の現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和5年度では、主枝成性に関わる候補領域において、主枝成性の‘UT1’と非主枝成性の‘アールスフェボリット春系3号’とのゲノム比較解析よって検出したSNP情報に基づき作成したSNPマーカーを用いてファインマッピングを行う。また、主枝成性を示す雑草メロン系統、非主枝成性固定系統、戻し交雑集団の分離個体(主枝成性および非主枝成性)を用いて、主枝の茎頂における遺伝子の発現解析を行い、候補領域において有意に発現する遺伝子を検出することで候補遺伝子を同定する。次に、主枝成性の雑草メロン系統と同一の既報の性決定遺伝子の遺伝子型を有する20系統の非主枝成性のメロン系統を用いて、雑草メロン系統とのF1を作出し、その性表現を評価することで新規性決定遺伝子と既報の性決定遺伝子との相互作用の解明に努める。
|