2022 Fiscal Year Annual Research Report
Quantitative and Qualitative Assessment of Groundwater Resource using Multiple Tracers in Tropical Urban Area
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22J10809
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
齋藤 真理子 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 地下水涵養源 / 熱帯都市流域 / 複雑な地質構造 / 酸素・水素安定同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、熱帯都市流域における地下水資源の量的・質的評価を目的としている。熱帯都市域では、人々の生活や経済活動の場が集中し、農業・工業・生活用水等に用いる地下水需要が高まっている。地下水に係る問題の原因は地下水の流れの上流側にあるため、地下水がどこから来るか(涵養源)の理解が不可欠である。しかし、複雑な地質構造上の流域では、複数の地質を通って地下水が流れるため、地下水涵養源の推定が難しい。また、熱帯域の気候条件下における研究事例は極めて少ない。したがって、複雑な地質構造上であり熱帯域に位置するマレーシアの首都クアラルンプール市域において、その主要河川であるクラン川流域を対象とし、地下水涵養源の推定を行った。当該地域は厚い石灰岩の上に堆積岩(砂岩・泥岩の互層)が重なっており、それらが花崗岩の貫入による変成作用を受けた複雑な地質構造上にある。上流域には花崗岩で構成される最高標高1421 mの山地が、中・下流域には堆積岩で構成される最高標高250 mの丘陵地が分布している。また、上流域から下流域にかけて、河川近傍の低地には沖積層が広がっている。当該地域において、水文観測、水試料の採取、酸素・水素安定同位体比(δ値)および無機溶存イオン濃度等の水質分析を実施した。得られた降水・河川水・地下水中のδ値の空間分布特性から、当該地域の地下水涵養源を推定した。その結果、下流域の深層地下水は主に最高標高1421 mの山地で涵養され、浅層地下水は主に最高標高250 mの丘陵地で涵養されることが示唆された。また等水理水頭線と水質特性の空間分布図から、クラン川本流の採水標高26 m地点において、浅層の地下水が河川水に流出していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度はマレーシア・クアラルンプール市域のクラン川流域において、相対的に降水量の少ない8, 9月に2回、降水量の多い12月に1回、計3回の集中的な現地調査を行った。クラン川本流の上流から下流にかけて地下水、河川水、ダムや遊水地等の表層貯留水を採取し、酸素・水素安定同位体比(δ値)および無機溶存イオン濃度を分析した。調査により、既存のデータが不十分であった標高100~800 mの高標高部における水質データが得られた。あわせて、現地でのマレーシア水環境省・マレーシアエネルギー天然資源省・マレーシア原子力機関等との打ち合わせや、公開されている降水量・河川流量・地下水観測井の水位等の水文観測データを収集した。これまでに得られた成果を取りまとめ、国際学会で発表した。また本研究の基礎的なデータとなる森林流域での研究成果を査読付学術誌に投稿し、掲載受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
当該地域における地下水涵養源の季節変化を明らかにするため、2022年度に採取・解析した降水・地表水・地下水のδ値を用い、相対的に降水量の少ない時期と多い時期の河川水・地下水中のδ値および無機溶存イオン濃度を比較する。また、山地で涵養された地下水が下流域まで流動するプロセスを明らかにするため、流域の地質・地形に関する既存資料のレビューと2022年度に収集した地下水観測井戸のデータ解析を行う。これまでに収集した水質、地下水面標高、地質・地形情報等のすべてのデータを統合し、熱帯都市域における地下水資源を量的・質的に評価する。
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