2023 Fiscal Year Annual Research Report
Quantitative and Qualitative Assessment of Groundwater Resource using Multiple Tracers in Tropical Urban Area
Project/Area Number |
22KJ0395
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
齋藤 真理子 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Keywords | 地下水流動系 / 熱帯都市域 / マルチトレーサー |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までにマレーシア・クアラルンプール市域のクラン川流域において地下水, 河川水, ダムや遊水地等の表層貯留水を採取し, 水素・酸素安定同位体比および無機溶存イオン濃度を分析した.あわせて, 公開されている降水量・河川流量・地下観測井の水位等の水文観測データを収集した.2023年度は地理空間情報システムを用いてこれらの既存データを空間的に解析した.クラン川本流の河川水における酸素安定同位体比は,上流部から中流部への流下に伴い上昇し,中流部の標高26 m付近で最大値-7.2‰を示した.一方これより下流におけるそれは,流下に伴い-7.6‰まで低下した.この傾向は,従来の同位体水文学において報告されている,“河川水の水素・酸素安定同位体比は涵養源の降水におけるそれを反映し,内陸部の高標高域ほど低く,沿岸部の低標高域ほど高くなる”という傾向とは異なるものであった.河川および地下水の水素・酸素安定同位体組成,無機溶存成分組成,ならびに地下水の3次元的流動傾向を考慮すると,源流部で涵養され中流から下流域の深層を流動する地下水は相対的に低い安定同位体比により構成され,中流から下流部に至る河川の流程において流出し,河川の水素・酸素安定同位体比を低下させる要因になっているものと考えられた.以上のことから,本研究対象流域の地下水は,地層の傾斜方向に流れるのではなく,上流域から下流域にかけて複数の地層を横断して流動しているものと判断された.したがって,複雑な地質構造の条件下においても,地下水流動系は地形条件によって規定されることが示された.本研究対象流域のように,降水量が多く,かつ動水勾配が大きい場の条件下においては,地下水流動系は地層の堆積構造に依らず,地形条件により強く影響を受けるものと考えられる.
|